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2026-04-04AI BL 音声作品 台本 プロンプト

AI BL音声作品の台本プロンプト——「声だけで落とす」シナリオをAIに書かせる方法

「5トラック40分のBLシチュボ台本書いて」——返ってきたのは地の文びっしりの小説だった。セリフだけ手動で抜き出し、トラックの区切りを自分で入れ直す。3時間経っても、Track 2の途中で力尽きた。

音声作品の台本は小説でも舞台台本でもない。「聴き手の耳元で再生される」前提の、独自フォーマット。AIに書かせるには、音声専用の設計図をプロンプトで渡す必要がある。

音声作品の台本が「普通の台本」と違う3つの点

BL台本の基本フォーマットはAI BL台本の書き方で解説した。音声作品にはさらに固有のルールがある。

トラック分割。DLsiteやBOOTHの音声作品は複数トラック構成が基本。1トラック10〜20分、合計30〜60分。場面転換で区切り、聴き手がシークしやすくする。

シチュボ形式。BL音声作品の主流はシチュエーションボイス(シチュボ)。聴き手が受け側になるため、受けのセリフがない。攻めの独白+ト書き+SEだけで構成する。

バイノーラル指示。ダミーヘッドマイクでの収録を前提に、「右耳から囁く」「正面から話す」といった声の位置をト書きに含める。

この3点をプロンプトで指定しないと、AIは地の文入りの小説か、位置指定のないラジオドラマ風テキストを返す。

ステップ1: トラック構成表を先に渡す

AIに「40分の台本」とだけ頼むと、起承転結のない一本道が出てくる。先にトラック構成表を渡すことで、各トラックの感情カーブを制御できる。以下はそのまま使える構成表の例。

【トラック構成表】BLシチュエーションボイス
全4トラック / 合計約40分 / 1分≒300字

Track 1「再会」(10分 / 約3,000字)
場所: 免許センターの待合室
状況: 聴き手が番号待ちをしていると、学生時代の先輩・片岡が隣に座る
感情: 懐かしさ → 気まずさ
引き: 「……帰り、どうする?」で次トラックへ

Track 2「距離」(12分 / 約3,600字)
場所: 近くのファミレス
状況: 3年の空白に触れる。片岡が「お前のこと、ずっと探してた」と言う
感情: 警戒 → 動揺
引き: SEで食器の音が止まり、沈黙

Track 3「温度」(12分 / 約3,600字)
場所: 帰り道、夜の住宅街
状況: 並んで歩く。片岡の声が段々近づく
感情: 期待 → 決壊
引き: 指先が触れた瞬間で切る

Track 4「答え」(6分 / 約1,800字)
場所: 片岡の部屋の玄関
状況: 送ってきた片岡が帰ろうとする。聴き手が引き止める(声なし、動作だけ)
感情: 覚悟 → 安堵
引き: SEで玄関の鍵が閉まる音

【キャラ】片岡 海(かたおか うみ)26歳 / 消防署の事務員
一人称: 俺
性格: 鷹揚でどこか抜けている。核心をつく言葉を無自覚に放つ。照れると声が低くなる
語尾: 「〜だよな」「〜かもな」(断定を避ける柔らかさ)
禁止語: 「好きだ」「付き合ってくれ」(言葉にせず態度で示す)

【出力ルール】
- シチュボ形式: 聴き手(受け)のセリフは書かない
- 地の文・ナレーション禁止
- 出力: キャラ名「セリフ」/(ト書き)/ SE:
- ト書きに声の位置(右耳/左耳/正面/背後)と距離(耳元/普通/遠い)を必ず書く

ポイントは、全トラックを一度に生成させないこと。Track 1-2を先に出力させ、品質を確認してからTrack 3-4を追加指示する。一括生成は後半のトラックが薄くなる。

次に、自分のキャラとシチュエーションで使える空テンプレート。

【トラック構成表】BLシチュエーションボイス
全{トラック数}トラック / 合計約{分数}分

Track 1「{トラックタイトル}」({分数}分 / 約{文字数}字)
場所: {場所}
状況: {聴き手と攻めの関係}。{出会い・再会のきっかけ}
感情: {始まりの感情} → {終わりの感情}
引き: {次トラックへの引き}

【キャラ】
{名前} {年齢}歳 / {職業}
一人称: {一人称}
性格: {表の顔}。{裏の本音}。{照れたときの癖}
語尾: {口癖・語尾パターン}
禁止語: {このキャラが絶対に言わない言葉}

【出力ルール】
- シチュボ形式: 聴き手のセリフは書かない
- 地の文禁止。出力: キャラ名「セリフ」/(ト書き)/ SE:
- ト書きに声の位置と距離を書く

このテンプレートの全トラックパターン(甘め・切なめ・修羅場の3シナリオ記入例付き)はBL Prompt Kit(BOOTH)で公開している。

ステップ2: バイノーラル指示で「声の距離」を設計する

音声作品のト書きには、通常の台本にはない「音の位置」の指定が要る。同じ「再会の第一声」でバイノーラル指示の有無を比較する。

指示なし(before) 片岡「久しぶりじゃん。元気だった?」 (ト書き: 笑顔で隣に座る) 片岡「免許の更新? 俺もだよ。なんか縁あるな」

バイノーラル指示あり(after) (ト書き: 右側、遠い。椅子を引く音。) 片岡「……あれ。お前、もしかして——」 (ト書き: 正面、普通の距離。声のトーンが上がる。) 片岡「やっぱそうだ。うわ、マジで久しぶり」 (ト書き: 右耳、やや近い。声量が落ちる。) 片岡「……3年、か。変わんないな、お前」

▶ 変えたのは「ト書きに声の位置と距離を加えた」だけ。

人間の脳は左右の音のわずかな時間差から音源の位置を推定する。ト書きで声の位置を「遠い→正面→右耳近く」と動かすだけで、聴き手の脳内に「片岡が向こうから来て、隣に座り、顔を寄せる」動線が自動構築される。テキストの小説では起こらない、聴覚だけが生む没入。音声作品の強みはここにある。

BL小説の感情描写の基本はChatGPTでBL小説を書く方法で解説している。台本でもキャラ設定の構造は同じで、「セリフ例3つ+禁止語」がそのまま使える。

まとめ

  • 音声作品の台本はトラック分割・シチュボ形式・バイノーラル指示の3つをプロンプトで明示する
  • AIにはトラック構成表を先に渡し、1〜2トラックずつ生成させる。一括生成は後半の質が落ちる
  • バイノーラルのト書き(位置・距離・移動)を加えるだけで、聴き手の脳内に空間が立ち上がる

「声だけで落とす」台本は設計次第でAIが書ける。トラック構成テンプレートの全パターン(記入例付き)はBL Prompt Kit(BOOTH)で公開している。noteでもBL小説プロンプトの詳しい解説を読める。

CharaNote開発日記

「AIに口調を守らせたい」——この記事で紹介したテンプレートを、もっと直感的に管理できるツールを作っています。

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