AI BL攻め受けプロンプトテンプレ——「攻め」とラベルを貼るだけでは書き分けられない理由
ChatGPTに「攻め: クール系」「受け: 天然系」と指定した。出力を読んだ。2人とも丁寧語で、同じテンションで、同じ量のセリフを喋っている。名前を隠したら、どちらが攻めでどちらが受けか区別がつかない。
この問題は「AIの性能」ではなく「プロンプトの構造」に原因がある。攻め受けの差は、性格のラベルではなく口調ルールと行動パターンの設計で生まれる。
「攻め/受け」が同質化する構造的な原因
AIに「攻め」と書いても、出力はほとんど変わらない。AIにとって「攻め」「受け」はただのラベルで、具体的な行動指示ではないからだ。
BLにおける攻め受けの差は、3つの層で構成されている。
- セリフの量: 攻めは短い言葉で核心を突く。受けは多く喋って本音を隠す(あるいはその逆)
- 行動の起点: どちらが場の空気を動かすか。先に触れるのか、触れられて反応するのか
- 沈黙の意味: 攻めの沈黙は「決意」、受けの沈黙は「動揺」——同じ「……」でも文脈がまったく違う
この3層をプロンプトに落とし込まないと、AIは「なんとなく優しい人が2人いるシーン」を延々と生成する。
テンプレートで攻め受けの「差」を構造化する
BL Prompt Kitのキャラ設定シートには「口調ルール」と「関係性」の欄がある。この2つが、攻め受けの書き分けの核になる。
実際のテンプレートで、バーテンダー(攻め)と脚本家(受け)を設定してみる。
攻め側——氷室楓(30歳・バーテンダー)の設定:
【口調ルール】
- 一人称: 俺
- 語尾: 言い切り(「〜だ」「〜だろ」)
- セリフの特徴: 短文。1ターンで2文以内。主語を省く
- 絶対に使わない言葉: 「好き」「大切」など感情の直接表現
【関係性】
- 相手への態度: 素っ気なく見えるが、行動で世話を焼く
- 相手への本音: 言語化できていない。手が先に動く
- 攻め/受け: 攻め——場の空気を動かす側。沈黙で圧をかける
受け側——柚木陽(25歳・脚本家)の設定:
【口調ルール】
- 一人称: 僕
- 語尾: 「〜なんだけど」「〜かな」語尾が決まらない
- セリフの特徴: 長い。話しすぎて自分で墓穴を掘る
- 絶対に使わない言葉: 「助けて」(意地でも言わない)
【関係性】
- 相手への態度: 平静を装うが、目で追っている
- 相手への本音: 自覚しているが、認めたくない
- 攻め/受け: 受け——場の空気に反応する側。動揺が身体に出る
ポイントは「攻め: クール」のような一語で終わらせないこと。口調ルール(一人称・語尾・セリフの特徴・絶対に使わない言葉)と関係性(態度・本音・立ち位置)の組み合わせで、AIの出力に具体的な差が生まれる。
口調ルールによるキャラの書き分けについては「ChatGPTのキャラ設定プロンプト——「全員同じ口調」になる問題を構造で解決する」で詳しく解説している。
実例: 同じシーンで攻め受けの差が出るか検証する
上のテンプレートをChatGPTに渡して、「深夜のバー、閉店間際」のシーンを生成した結果を比較する。
テンプレートなし(before):
「今日は遅かったね」と氷室が言った。 「うん、締め切りが近くて。でも来たかったんだ」と柚木が微笑んだ。 「無理しないでね。身体が大事だよ」 「ありがとう。氷室さんは優しいね」
2人とも同じテンション、同じ語尾、同じ分量。攻め受け以前に、別人に見えない。
テンプレートあり(after):
柚木は3杯目のジントニックに手を伸ばした。 「今日さ、第3話のBパート、全部書き直しになったんだけど。プロデューサーが『もっとエモく』って——エモくって何、具体的に言ってくれないとこっちも困るんだけど、でもまあ言えないよねそんなこと、言えるわけ——」 グラスが、すっと遠ざけられた。 「水」 「……え」 氷室はカウンターの向こうから、水の入ったグラスを置いた。柚木の目を見ない。布巾でカウンターの同じ場所を、もう一度拭いた。 「飲んだら帰れ。タクシー呼ぶ」 柚木はグラスの水滴を指で追った。 「……まだ閉店じゃないでしょ」 「お前にはもう出さない」
攻めの氷室は、セリフが短い。「水」「飲んだら帰れ」——言葉ではなく行動(グラスを遠ざける、タクシーを手配する)で柚木を守っている。受けの柚木は喋りすぎて本音(ここにいたい)を隠す。グラスの水滴を追う指先に動揺が漏れる。
この差は「攻め: クール」「受け: 天然」のラベルでは生まれない。テンプレートの口調ルールと関係性設定が、AIの出力に構造的な違いを作っている。
攻め受けタイプ別のテンプレ設定値
攻め受けの組み合わせごとに、テンプレートの設定値を入れ替えるだけで異なる関係性を生成できる。
攻めタイプ別:
| 攻めタイプ | セリフの特徴 | 行動パターン | 沈黙の意味 | |---|---|---|---| | 王様攻め | 命令形。疑問形を使わない | 先に決める。相手の返答を待たない | 「当然だろう」の無言の圧 | | 包容攻め | 柔らかいが主語が大きい(「俺たちは」) | 相手の逃げ道を塞ぐように優しくする | 「全部わかっている」の沈黙 | | 執着攻め | 同じ言葉を繰り返す | 距離を詰める。物理的に近い描写 | 「離さない」の沈黙 |
受けタイプ別:
| 受けタイプ | セリフの特徴 | 行動パターン | 沈黙の意味 | |---|---|---|---| | 強がり受け | 反論が多い。語尾が強い | 視線を逸らす。腕を組む | 「言いたいことがある」の沈黙 | | 天然受け | 核心をずれた返答をする | 攻めの動揺に気づかない | 何も考えていない(それが攻めを狂わせる) | | 意地っ張り受け | 「別に」「知らない」が多い | 素直になれず真逆の行動を取る | 感情が溢れるのを堪えている |
「王様攻め×強がり受け」「包容攻め×意地っ張り受け」「執着攻め×天然受け」——組み合わせによってシーンの力学がまったく変わる。テンプレートの設定値を表に沿って入れ替えるだけで、AIは異なる関係性のシーンを生成する。
テンプレートを使ったBL執筆のフロー全体は「ChatGPTでBL小説を書く方法——「それっぽいBL」を「刺さるBL」に変える構造」で解説している。
まとめ
AIでBLの攻め受けを書き分けるには、「攻め」「受け」のラベルではなく、口調ルールと関係性の行動パターンをテンプレートに落とし込む。セリフの量・行動の起点・沈黙の意味——この3層の差が、AIの出力を「2人の別人」に変える。
テンプレートの全項目と記入例を含むフルキットは BL Prompt Kit(BOOTH) で公開している。攻め受けタイプごとに設定値を入れ替えれば、自分だけの関係性を構造的に量産できる。