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2026-04-01AI 夢小説 推し 設定

AI夢小説の推し設定——「なんか違う」を「これが推し」に変える5つの要素

AI夢小説の推し設定——「なんか違う」を「これが推し」に変える5つの要素

ChatGPTに「乙女ゲームの推しで夢小説を書いて。生徒会長で完璧主義、誰にでも優しい。文化祭の準備で2人きりのシーン」と頼んだ。返ってきた推しのセリフがこれだった。

「大丈夫? 無理しないでね。僕がいるから、何でも言って」

——誰。推しは「何でも言って」なんて言わない。笑顔の裏に何か抱えていて、「大丈夫?」と聞くのは相手のほう。この推しは最初から全開で優しい。公式の推しの優しさは、もっと不器用で、もっと見えにくい場所にあった。

同じ推しを5つの要素に分解してAIに渡し直した。

鷹宮は模造紙を切り終えて、ハサミをペン立てに戻した。刃先の向きを揃えてから。

「……よし。次、看板の文字だな」

窓の外はもう暗い。教室には2人しかいない。

「鷹宮くん、そろそろ帰らないと——」

振り向いた顔が、いつもの笑顔ではなかった。笑っていないだけの、ただの顔。

「……ああ。そうだな」

一瞬だった。次の瞬間にはもう、見慣れた柔らかい微笑みに戻っている。

「ごめん、ぼんやりしてた。帰ろうか」

違うのはプロンプトの構造だけ。

推しが「なんか違う」になる原因——公式設定をそのまま渡す問題

推しの名前と公式プロフィールをAIにそのまま貼り付けると、AIは「属性の平均値」でキャラを生成する。「完璧主義」と書けば「完璧主義っぽい平均的なキャラ」。「優しい」と書けば「優しいっぽい平均値」。

推しが推しである理由は、公式設定に書いてある情報ではない。行間に滲み出る情報にある。

「誰にでも優しい」の裏にある「本当は疲れている」。「完璧」の裏にある「完璧でいることへの執着」。「笑顔」の裏にある「笑っていないときの顔を誰にも見せない」。

AIにはこの行間が読めない。だから、行間を明示的に書いて渡す。

AI夢小説の推し設定を5つの要素に分解するテンプレート

推しの公式情報を、AIが「演じられる」形に変換する。必要なのは5項目。

【推し設定テンプレート(夢小説用)】

■ 口調ルール
- 一人称: {人前} / {あなたの前}
- 語尾の癖: {人前} / {あなたの前}
- セリフ例(3つ):
  1. {人前でのセリフ}
  2. {感情が揺れたときのセリフ}
  3. {あなたに対するセリフ}
- 絶対に使わない言葉: {推しが言わないこと}

■ 性格の二面性
- 表の顔(人前): {みんなに見せている推し}
- 素の顔(あなたの前): {あなたにだけ見せる一面}
- 矛盾: {表と素のギャップ。1文で}

■ 関係性
- あなたに対する態度: {具体的な行動で書く}
- あなたに対する本音: {推し本人も気づいていない感情}
- 関係性の現在地: {今の距離感}

■ 癖・小道具
- 推しの癖: {感情が出るときの動作}
- キーアイテム: {推しを象徴する具体物}

■ 禁止事項
- {推しに絶対させないこと。3つ}

このテンプレートは「BL Prompt Kit」キャラ設定シートを夢小説向けに再構成したものです

5項目のうち最も重要なのが口調ルールの「二面性」。夢小説の推しの魅力は、人前とあなたの前で態度が切り替わること。この二重構造をAIに渡さないと、全場面で同じテンションの推しになる。

架空の乙女ゲーム「星空のワルツ」の推し、鷹宮 暁(たかみや あきら)で記入してみる。公式プロフィールは「17歳、生徒会長。成績優秀、運動万能。いつも笑顔で誰にでも優しい完璧タイプ。実は料理だけは壊滅的に下手」。

■ 口調ルール
- 一人称: 僕(人前)/ 俺(あなたと2人きりのとき。本人無自覚)
- 語尾の癖: 〜だよ、〜かな(人前では柔らかい)
  / 〜だな、〜だろ(2人きりだと断定口調が出る)
- セリフ例:
  1. 「うん、大丈夫。任せて」(人前。完璧な笑顔つき)
  2. 「……別に。疲れてない」(嘘。目が合わない)
  3. 「あんた、まだ帰ってなかったのか」
    (あなたに対して。素っ気ないが、声だけ少し安堵している)
- 絶対に使わない言葉:
  「助けて」「つらい」「寂しい」。弱さを言語化しない

■ 性格の二面性
- 表の顔: いつも笑顔。頼まれたことは全部引き受ける。
  生徒会長として隙を見せない
- 素の顔: 疲れている。一人になると笑顔が消える。
  「完璧」を続けることに限界を感じているが、やめ方がわからない
- 矛盾: 「別に大変じゃない」と言いながら、
  あなたがお茶を差し入れると手が止まる

■ 関係性
- あなたに対する態度: 他の人と同じ笑顔で接する——つもりだが、
  あなたの前だと笑顔がワンテンポ遅れる
- あなたに対する本音:
  「この人の前だと、ちゃんと笑えているか不安になる」
- 関係性の現在地: 文化祭実行委員の同僚。
  鷹宮はあなたに「素」が漏れていることに気づいていない

■ 癖・小道具
- 癖: 考え事をするとペンを回す手が止まる
  (止まった瞬間が本音に近い)
- キーアイテム: 予定がびっしり詰まったスケジュール帳。余白がない

■ 禁止事項
- 鷹宮に弱音を吐かせない
- 「特別」「好き」と言わせない
- 最初から素の顔を見せない
  (あなたの前でだけ、ふとした瞬間に崩れる形にする)

公式プロフィールの「いつも笑顔で誰にでも優しい」が、設定シートでは「笑顔がワンテンポ遅れる」「別に大変じゃないと言いながら手が止まる」に変換されている。

AIに「優しい」と渡すと「何でも言ってね」が出力される。「笑顔がワンテンポ遅れる」と渡すと、AIは笑顔の裏にある感情を動作で表現する

禁止事項が特に効く。 「弱音を吐かせない」と縛ると、AIは弱音の代わりにハサミの刃先を揃える動作や、ペンを回す手が止まる瞬間で推しの内面を表現するしかなくなる。冒頭の出力で鷹宮が「ぼんやりしてた」と笑ってごまかすのも、弱音を言語化できない推しの性格が反映された結果。

ChatGPTのキャラ設定プロンプトでは、この口調・性格設定の構造を6項目のフルテンプレートで解説している。推し設定をさらに精密にしたいなら参照してほしい。

夢主(あなた)の設定が推しの出力を変える

推し設定だけ渡して夢主の設定を省略すると、AIは夢主を「反応が薄い聞き手」にする。推しが何を言っても「はい」「そうですね」。推しの「素」が出る瞬間は、夢主の言動がトリガーになるのに、夢主が空気だとトリガーがない。

夢主にも最低限、口調と「推しの前での態度」を設定する。

■ 夢主(あなた)の設定
- 一人称: 私
- 二人称: 鷹宮くん(通常)
  / ……暁くん(ふとした瞬間。すぐ訂正する)
- セリフ例:
  1. 「次の工程、確認してもいいですか」
    (通常。丁寧だが距離がある)
  2. 「……鷹宮くん、無理しないでください」
    (言ってから、踏み込みすぎたと後悔して目をそらす)
  3. 「お茶、置いておきますね。砂糖は……多めでいいですか」
    (世話を焼くが、さりげなく)

セリフ例2の「無理しないでください」。これを言った後に「踏み込みすぎたと後悔して目をそらす」——この1行があると、AIは夢主に「推しとの距離感に迷う人間」の行動を書かせる。

夢主が「無理しないで」と踏み込む → 推しの笑顔がワンテンポ遅れる → あなたが目をそらす → 推しも黙る。この連鎖が生まれるのは、夢主にも「推しに対してどう振る舞うか」の設定があるから。

夢小説の推しと夢主の設計手順の全体像はChatGPTで夢小説を書く方法で解説している。

まとめ

  • 推しの公式プロフィールをそのまま渡してもAIは「属性の平均値」しか出力しない。推しの「らしさ」は行間にある
  • 口調の二面性(人前 vs あなたの前)・性格の矛盾・癖と小道具の3つを明示的に書くと、AIが推しを「演じる」精度が上がる
  • 禁止事項(弱音を吐かせない、「好き」と言わせない)が、推しらしい不器用な感情表現を引き出す

推し設定テンプレートのフルキット(記入ガイド + 3ジャンルの記入例付き)は、BL Prompt Kit(BOOTH)からダウンロードできる。テンプレートに推しの情報を埋めるだけで、「なんか違う」が「これが推し」に変わる。

作った推し設定をクラウドに保存して、次の夢小説でもすぐ呼び出したいなら、キャラノート(β)で設定シートを管理できる。