「この場面、読者にも見えてほしいのに……」
2時間かけて書いたクライマックス。主人公が雨の中、相手の車に駆け寄るシーン。自分の頭には鮮明に映像が浮かんでいる。でも文字だけで、この光景はどこまで伝わっているのか。画面をスクロールしながら、腕を組んだ。
AI画像生成を使えば、「見えている場面」をそのまま読者に渡せる。ただし、小説の文章をそのまま画像AIに貼っても思い通りの絵にはならない。キャラ設定を「イラスト用の言語」に変換する工程が要る。
ステップ1: 挿絵にする場面を「転換点」で切る
全ページに挿絵を入れる必要はない。狙うべきは感情の転換点——キャラの関係性が変わる瞬間だけでいい。
1万字の短編なら3〜5枚が目安。具体的にはこのタイミング:
- 出会い: 読者にキャラの外見イメージを定着させる
- 関係が動く瞬間: 衝突、和解、告白——空気が切り替わる場面
- ラストシーン: 余韻を画像で残す
たとえばBL短編で、植物園の学芸員・星野蒔人(33歳)が、深夜の24時間コインパーキングで遺品整理士の和泉奏真(25歳)と雨宿りする場面。星野が自分の傘を黙って差し出す瞬間——ここが「転換点」。この1枚だけ挿絵にする。
ステップ2: キャラ設定をイラストプロンプトに変換する
小説のキャラ設定には「性格」「過去」「口癖」が書いてある。でも画像AIはこれらを理解できない。画像AIが読めるのは外見・構図・雰囲気の3要素だけ。
星野と和泉のシーンを画像生成AIに渡す完成形プロンプト:
1 man, 33 years old, tall, gentle eyes, dark brown hair tied loosely,
wearing a beige trench coat, holding an umbrella over another person.
1 man, 25 years old, sharp jawline, short black hair, wearing a navy
work jacket, looking up with a defiant expression.
Night, rainy parking lot, single streetlamp casting warm light,
rain visible in the light beam. Soft watercolor illustration style.
ポイントは3つ:
- 年齢と体格を数値で指定する(「優しい雰囲気」ではなく「gentle eyes, tall」に変換)
- 服装で職業を暗示する(設定を語らず見た目で伝える)
- 構図と照明を指定する(場面の空気を決めるのは光の色と方向)
このテンプレートを自分のキャラに当てはめる:
1 {性別}, {年齢} years old, {体格の特徴}, {髪型・髪色},
wearing {服装}, {そのシーンでの動作・ポーズ}.
{背景の場所}, {時間帯}, {照明の種類と方向}.
{画風: watercolor / anime / realistic 等}
{プレースホルダ}を自分のキャラで埋めるだけで、あの場面がイラストになる。ただし全キャラ・全シーンのバリエーションを1から作るのは時間がかかる。BL Prompt Kit(BOOTH)のフルキットには、攻め×受けの体格差パターン別・場面別の記入例が揃っている。
ステップ3: 生成→選定→配置
1枚の挿絵を完成させる流れ:
- ラフ生成: 上のプロンプトで3〜5枚生成する
- 選定: 構図が「転換点の感情」に最も近い1枚を選ぶ
- 細部チェック: 指の本数、髪色の一貫性を確認。気になる点はプロンプトの該当部分を調整して再生成
- 配置: 小説内の該当シーンの直前に挿絵を入れる
直後ではなく直前に置く。読者が「この絵の続きを読む」体験になる。
情報設計の観点で言えば、画像は読者の脳に「視覚的な参照点」を作る。その参照点を持った状態で文章を読むと、文字だけでは補完しきれなかった空間情報——光の方向、二人の距離感、服の質感——が自動的に補完される。読者が自分の想像で埋める余白は残しつつ、方向だけ定める。それが挿絵の仕事。
before(よくある失敗プロンプト) 星野は雨の中、傘を差し出した。和泉は驚いた顔をしたが、すぐにいつもの強気な表情に戻った。心が温かくなる場面を描いてください。
after(テンプレート変換後) 1 man, 33yo, tall, dark brown hair in low ponytail, beige trench coat, extending umbrella with a calm half-smile. 1 man, 25yo, short black hair, navy work jacket, chin raised, rain on cheeks. Night parking lot, single warm streetlamp, soft watercolor.
▶ 変えたのは「感情の説明」を「目に見える動作と光」に置き換えただけ。
画像AIに「心が温かくなる」は伝わらない。代わりに暖色の街灯、差し出す腕の角度、見上げる視線——視覚情報が、見る人の中に「温かさ」を再構成する。AI小説キャラ設定の完全ガイドで解説した「5層モデル」の外見層を画像用に変換する技術が、ここで活きる。
まとめ
- 挿絵にする場面は「感情の転換点」だけに絞る
- キャラ設定を「外見・構図・光」のテンプレートで変換する
- 挿絵は本文の直前に配置し、読者の想像に方向だけ与える
表紙デザインまで含めた同人誌制作の全体像はAI小説同人誌の表紙の作り方で解説している。まず1枚、自分の小説で一番好きなシーンから試してみてほしい。キャラ設定からイラストプロンプトへの変換テンプレート全パターンはBL Prompt Kit(BOOTH)に収録している。
CharaNote開発日記
「AIに口調を守らせたい」——この記事で紹介したテンプレートを、もっと直感的に管理できるツールを作っています。
CharaNoteは、キャラ設定シートをAIが読める形式で保存し、どのAIツールにもワンクリックで渡せるキャラ管理アプリです。現在クローズドβに向けて開発中。
進捗や先行アクセスの案内はCharaNote公式で。