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2026-04-04AI小説 心理描写 モノローグ プロンプト

AI小説の心理描写・モノローグの書き方——「声の距離」で没入を操るプロンプト設計

「……全部、ナレーションに聞こえる」

AIに心理描写を書かせた。主人公が葛藤する場面。出力を読み返すと「彼は後悔していた。あのとき声をかけていれば——」。心理描写ではなく、ナレーターが感情を実況しているだけだ。

モノローグが「ナレーション」になる原因

AIが出力するモノローグが他人事に聞こえるのは、声の距離が設計されていないからだ。

「後悔している」は遠い。「なんであのとき黙ったんだ」は近い。前者は観察者の報告で、後者は本人の声。AIに「心理描写を書いて」と指示すると、学習データの最頻パターンである三人称の説明文が返ってくる。

認知科学では、一人称の内的言語が読者の脳内で「自分の声」として処理されることがわかっている。読者がキャラの内面に入り込む瞬間、それは「読んでいる」から「考えている」へ切り替わる。この切り替えをプロンプトで起こすのがモノローグ設計の核心だ。AI小説のキャラ感情が薄い原因と対策では感情の「層」を扱ったが、今回は声の距離——同じキャラの内面でも遠い声と近い声を使い分ける方法に焦点を当てる。

完成形プロンプト: 声の距離を3段階で制御する

あなたは小説家です。以下の設定に基づいて、キャラクターの心理描写を「声の距離」で制御するシーンを執筆してください。

【声の距離ルール(最重要)】
モノローグには3つの距離があります。1シーン内で3段階すべてを使ってください:

1. 遠景(三人称の観察): 「堤は釣り竿を握り直した」——動作だけで内面を匂わせる
2. 中景(本人の自覚): 彼は思った、あの声を最初に聞いたのはいつだったか——地の文と思考の境目が曖昧
3. 近景(生の内声): ——聞くな。聞いたら終わる——ダッシュで囲んだ、文法を崩した本音

近景は1シーンに1回だけ。多用すると効果が薄れる。

【キャラ設定】
堤 和真(つつみ かずま)36歳 / 航空管制官
→ 人を動かす仕事をしているが、自分の感情は管制できない。笑顔で距離を詰めるが本音を見せない

長尾 理央(ながお りお)25歳 / 活版印刷工
→ 金属活字のインクの匂いが染みついている。人の好意に鈍い。声が低くて穏やか

【場面】
釣り堀。平日の昼間、客は二人だけ。Xのスペースで同じ深夜アニメの実況を続けるうちに声だけの関係ができた。初めてのオフ。理央が「この前の最終回、やっぱ納得いかない」と言った直後——堤はその声を生で聞いて、頭の中が一瞬白くなる。

【演出ルール】
- 感情を直接説明しない(「嬉しかった」「動揺した」禁止)
- 近景の内声は文法を崩してよい(体言止め、倒置、省略)
- 五感描写を必ず1つ入れる(この場面では聴覚)

空テンプレート: 自分のキャラで声の距離を設計する

あなたは小説家です。以下の設定で心理描写を「声の距離」で制御するシーンを執筆してください。

【声の距離ルール】
1. 遠景: {キャラ名}の動作だけで内面を匂わせる
2. 中景: 地の文と思考の境目が曖昧な描写
3. 近景: ダッシュで囲んだ本音。1シーンに1回だけ

【キャラ設定】
{キャラ名A}: {年齢} / {職業}
→ {性格の核}。{外面と内面のギャップ}

{キャラ名B}: {年齢} / {職業}
→ {性格の核}。{Aに与えている影響}

【場面】
{場所}。{二人の関係性}。{今この瞬間に起きていること}。

【演出ルール】
- 感情を直接説明しない
- 近景の内声は文法を崩してよい
- {この場面で効果的な五感}の描写を入れる

このテンプレートの記入例を1ジャンル分見せた。残りのジャンル別記入例(夢小説・ファンタジー)と「声の距離」×「感情の層」を組み合わせた応用パターンはBL Prompt Kit(BOOTH)のフルキットに収録している。

before/after: 声の距離が変えるもの

距離設計なし(before) 堤は動揺していた。理央の声がスマホ越しに聞いていたものと違い、心臓が速くなるのを感じた。「まあ、確かにあの最終回はな」と返した。

距離設計あり(after) 堤は釣り竿を握り直した。水面に浮きが二つ並んで揺れている。 「この前の最終回、やっぱ納得いかない」 あの声だ。日曜の深夜1時、イヤホンの右耳から聞こえていた声が、いま左の耳から来ている。距離が、近い。 ——やめろ。これは声だ。ただの声だ。 「……まあ、確かにあの脚本はな」 語尾が揺れた。理央はそれに気づかない。

▶ 変えたのは"感情を説明する代わりに、声の距離を3段階(動作→自覚→内声)で切り替える"だけ。

ChatGPT小説の感情描写のコツでは「嬉しかった」を書かずに感情を伝える方法を扱っている。声の距離と組み合わせると、心理描写の精度がさらに上がる。

まとめ

  • モノローグが「ナレーション」になるのは、声の距離が1段階しかないから
  • 遠景(動作)→ 中景(自覚)→ 近景(内声)の3段階をプロンプトに明示する
  • 近景は1シーンに1回。希少性が没入を作る

キャラ設定と声の距離をセットで管理するならキャラノート(β)が便利。モノローグ設計のジャンル別テンプレートと記入例付きフルセットはBL Prompt Kit(BOOTH)で。

CharaNote開発日記

「AIに口調を守らせたい」——この記事で紹介したテンプレートを、もっと直感的に管理できるツールを作っています。

CharaNoteは、キャラ設定シートをAIが読める形式で保存し、どのAIツールにもワンクリックで渡せるキャラ管理アプリです。現在クローズドβに向けて開発中。

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