「……あれ、この子、2話では猫アレルギーだったよな?」
BLシリーズの第5話をChatGPTに書かせた。主人公が保護猫を抱いて微笑んでいる。スクロールで第2話に戻る。「猫には近づけない体質」と書いてある。名前も口調も合っているのに、設定だけが別人になっている。
1話完結なら起きない。シリーズもの・連載になった途端、AIは設定を「忘れる」。
シリーズもので設定が矛盾する構造的な原因
単話の設定忘れはAI小説の設定忘れを防ぐ「設定リマインダー」で対策できる。だがシリーズ連載には固有の問題が2つある。
設定の「変化」と「不変」が混在する。 1話でギクシャクしていた二人が3話で距離を縮めた——これは「正しい変化」。だが猫アレルギーが消えるのは「誤った変化」。AIにとってはどちらも「以前と違う状態」でしかなく、区別がつかない。
前話の要約が設定を上書きする。 「前回のあらすじ」をプロンプトに入れると、あらすじに含まれない設定は優先度が下がる。3話で猫アレルギーに触れなければ、4話ではその情報が存在しないのと同じになる。
ステップ1: 設定を3層に分ける
解決策は、設定を永続層・可変層・一時層の3つに分類すること。完成形を見てほしい。
【設定台帳 — 萩原千歳(第5話時点)】
[永続層(絶対に変わらない事実)]
- 萩原 千歳 / 40歳 / 弁護士
- 左利き。万年筆で書く癖がある
- 猫アレルギー(くしゃみが出る程度)
- 口調: 丁寧語を崩さない。「〜ですね」「〜でしょう」
[可変層(物語の進行で変わる事実)]
- 第1話→第3話: 守谷に敬語のみ → 第4話: 名前で呼ぶようになった
- 第5話時点の関係性: ボランティアシフト後に二人で食事するのが習慣化
[一時層(そのシーンだけの状態)]
- 第5話冒頭: 右手に包帯(前日の庭仕事で切った)
このテンプレートを各話の冒頭でAIに渡す。「これまでのあらすじ」ではなく「キャラの現在の状態」を渡すのがポイントだ。
ステップ2: 各話の冒頭で「遵守ルール」を添える
設定台帳だけでは足りない。AIに「どの設定を優先するか」を明示する。
【設定の遵守ルール】
- 永続層の設定は絶対に変更しない。矛盾する描写を書いてはいけない
- 可変層は「変化の根拠」があるときだけ更新する
- 猫アレルギーは永続層。猫に触れるシーンを書くなら、アレルギー症状も書くこと
ChatGPTで小説の設定が矛盾する原因と対策で解説した「設定の優先順位付け」を、シリーズ全体に拡張した形になる。
ステップ3: 話の末尾で「変化ログ」を出力させる
各話の執筆後に、AIに「この話で変化した設定」を出力させる。
この話の執筆が完了しました。以下のフォーマットで「変化ログ」を出力してください。
- 可変層で変化した設定: (何が → 何に変わったか)
- 一時層で追加された状態: (このシーンだけの情報)
- 永続層との矛盾チェック: 永続層の設定に矛盾する描写がないか確認し、あれば指摘
変化ログを設定台帳に反映してから次の話に進む。この「書く→記録→次を書く」のサイクルが、シリーズ全体の一貫性を守る。
自分のシリーズで使う場合は、以下の空テンプレートに設定を記入する。
【設定台帳 — {キャラ名}(第{話数}話時点)】
[永続層]
- {キャラ名} / {年齢}歳 / {職業}
- {身体的特徴・癖}
- {絶対に変わらない設定}
- 口調: {口調ルール}
[可変層]
- 第{N}話→第{M}話: {何が変わったか}
- 第{話数}話時点の関係性: {現在の関係}
[一時層]
- 第{話数}話冒頭: {この話だけの状態}
このテンプレートのシリーズ管理シート(10キャラ分・関係性マトリクス付き)と全ジャンル対応の記入例はBL Prompt Kit(BOOTH)のフルキットに収録している。
なぜ「3層構造」が効くのか
人間の記憶には長期記憶(変わらない事実)と作業記憶(今だけ必要な情報)の区別がある。読者も無意識にこの区別をしながらシリーズを読んでいる。「このキャラは左利き」は長期記憶に入り、「今日は右手に包帯」は作業記憶に入る。
AIにはこの区別がない。全情報が同じ重みでコンテキストに載る。だからこそ人間が「永続」「可変」「一時」とラベルを貼って渡す必要がある。ラベルが正確なほど、AIの出力は読者の記憶構造に近づく。
まとめ
- シリーズ連載で設定が矛盾するのは、AIが「変えていい設定」と「変えてはいけない設定」を区別できないから
- 設定を永続層・可変層・一時層の3層に分けて各話冒頭で渡す
- 話の末尾で変化ログを出力させ、設定台帳を更新してから次の話へ
設定台帳テンプレートの全パターン版はBL Prompt Kit(BOOTH)に収録。キャラ設定を複数AIツールで使い回したいならキャラノート(β)も試してみてほしい。キャラ設定の崩壊対策はnoteでも詳しく解説している。
CharaNote開発日記
「AIに口調を守らせたい」——この記事で紹介したテンプレートを、もっと直感的に管理できるツールを作っています。
CharaNoteは、キャラ設定シートをAIが読める形式で保存し、どのAIツールにもワンクリックで渡せるキャラ管理アプリです。現在クローズドβに向けて開発中。
進捗や先行アクセスの案内はCharaNote公式で。