ChatGPTに「書店が舞台の小説を書いて」と頼んだ。キャラ設定は「宮野晴人、27歳、気さくな書店員」「篠崎凛、20歳、真面目なバイト」。返ってきた2人の会話がこれだった。
「今日も忙しかったですね」と宮野は言った。 「そうですね、でも楽しかったです」と篠崎は答えた。
どちらも「ですね」の丁寧語。気さくなはずの宮野が堅い敬語で話している。真面目な篠崎も同じ温度の「ですね」。キャラ設定は渡したのに、口調が完全に同じ。
原因は「設定が足りない」ことではない。「設定の構造が間違っている」。ChatGPTのキャラ設定プロンプトに必要なのは、「性格:クール」のような一行の説明ではなく、AIが口調・性格・関係性を区別できる構造化されたテンプレート。
ChatGPTのキャラ設定プロンプトに必要な6つの項目
「性格:明るい」のような一行をChatGPTに渡すと、AIは数ターンで設定を忘れる。性格・口調・状態・関係性を分離して構造化することで、AIがキャラを正確に維持できるようになる。
テンプレートの構造は以下の6項目。
【キャラクター設定シート】
■ 基本情報
- 名前 / 年齢 / 職業・立場 / 外見の特徴(3つまで)
■ 口調ルール(最重要)
- 一人称 / 二人称 / 語尾の癖 / 話し方の特徴
- 絶対に使わない言葉 / セリフ例3つ
■ 性格
- 表の顔(人前) / 裏の顔(内面) / 矛盾
■ 内面
- 最も大切にしているもの / 最も恐れていること / 自分でも気づいていない感情
■ 関係性
- 相手への態度 / 相手への本音 / 関係性の現在地
■ 現在の状態
- 場所 / 感情 / 直前に起きたこと
このテンプレートは「BL Prompt Kit」キャラ設定シートの構造です
6項目のうち、最も重要なのは口調ルール。性格や内面はAIがある程度推測できるが、口調だけは具体的に指定しないとコントロールできない。
そもそもキャラクターの初期設計で手が止まるなら、AI小説キャラクターの作り方——「動かない設定」を3ステップで直すで基本を固めてからこのテンプレートに戻ると、記入がスムーズになる。
ステップ1: 口調ルールを4点セットで指定する
口調ルールの核は一人称・語尾・セリフ例・禁止語の4点セット。
冒頭で失敗した「気さくな書店員」の宮野晴人で埋めてみる。
■ 口調ルール(最重要)
- 一人称: 俺
- 二人称: 篠崎(呼び捨て。たまに「凛」と呼びそうになって言い直す)
- 語尾の癖: 「〜じゃん」「〜だろ」「〜だって」。敬語を一切使わない
- 話し方の特徴: ため口。軽い。褒めるときも茶化す。ただし要所で急に言葉が少なくなる
- 絶対に使わない言葉: 丁寧語。説教。長い正論
- セリフ例:
1. 「あー、その棚もう終わってんの。早いな、お前」(平常時。感心を軽い口調で伝える)
2. 「……別に。たまたま余っただけ」(感情が動いたとき。目を逸らす)
3. 「篠崎、肩凝ってんだろ。上向いて仕事すんなって」(篠崎に対して。ぶっきらぼうに世話を焼く)
ポイントはセリフ例が3つあること。AIは具体例から口調パターンを学習する。平常時・感情時・対人時の3パターンがあると、どの場面でも口調がブレにくい。
もう一人、「真面目なバイト」の篠崎凛。
■ 口調ルール(最重要)
- 一人称: 僕
- 二人称: 宮野さん(常に「さん」付け。どれだけ親しくなっても崩れない)
- 語尾の癖: 「〜です」「〜ます」「〜でしょうか」。硬い丁寧語を一貫して使う
- 話し方の特徴: 簡潔で正確。余計なことを言わない。感情が動いても言葉数が変わらない
- 絶対に使わない言葉: くだけた表現。スラング。感嘆詞(「すごい」「やばい」等)
- セリフ例:
1. 「宮野さん、F棚の補充が完了しました。次はどこに入りますか」(平常時。業務報告の口調)
2. 「……問題ありません。続けます」(動揺したとき。声だけが硬くなる)
3. 「宮野さん、お茶を淹れました。机に置いておきます」(宮野に対して。行動で返す)
2人の口調ルールを並べて対比する形でプロンプトに入れる。AIは「この2人は違う喋り方をする」と認識しやすくなる。登場人物が3人以上になるシーンでは、AI小説で複数キャラの会話を書き分けるテンプレでさらに掘り下げている。
AI小説の口調が崩れる3つの原因では、この口調ルールが長い会話でも維持される仕組みと、崩れたときの修正方法を解説している。
ステップ2: 性格と関係性で「深み」を作る
口調ルールで「どう喋るか」を決めたら、次は「なぜそう喋るか」を設定する。
性格は表の顔・裏の顔・矛盾の3層で書く。
■ 性格(宮野晴人)
- 表の顔: 誰にでもフランク。後輩にも敬語を使わない。軽い人間に見える
- 裏の顔: 人との距離を自分からは詰めない。軽い口調は壁の代わり
- 矛盾: 「誰でもウェルカム」という態度なのに、篠崎の前でだけ言葉を選んでいる
「矛盾」が最も重要。AIに矛盾を与えると、行動と内面のギャップが出力に反映される。「誰にでもフランク」なキャラが、特定の相手にだけ言葉を探す——このズレが物語を動かす。
関係性は態度と本音を分離して書く。
■ 関係性(宮野晴人 → 篠崎凛)
- 篠崎に対する態度: 他のバイトと同じように軽口を叩く。でも篠崎の作業は必ず確認している
- 篠崎に対する本音: 「真面目すぎる」と茶化しながら、その丁寧さに自分が救われていると気づいている
- 関係性の現在地: 先輩と後輩。宮野は篠崎を特別扱いしていることに自覚がない
「態度」と「本音」を分けると、AIは行動(軽口を叩く)と内面(実は見ている)のギャップを表現できるようになる。設定を一行に詰め込むより、この2つを分けて書く方がAIの出力は格段に良くなる。
ここまで丁寧に作った設定も、会話が5ターンを超えるとAIが忘れ始めることがある。長いシーンで設定を維持するには、AI小説の設定忘れを防ぐ「設定リマインダー」の構造が効く。
ステップ3: 設定シートを貼り付けてシーンを書かせる
6項目を埋めたら、ChatGPTに貼り付けてシーンを書かせる。ここで重要なのが、演出ルールと現在の状態をキャラ設定シートと一緒に渡すこと。
【演出ルール】
- 感情は説明しない。表情・沈黙・動作・セリフだけで表現する
- 「嬉しかった」「悲しかった」のような心情説明は禁止
- 感情が高ぶるほど言葉を少なく、動作を小さくする
■ 現在の状態(宮野晴人)
- 場所: 開店30分前の書店フロア。外は雨
- 感情: 眠い。でも篠崎が先に来ていたことに少し目が覚めた(自覚なし)
- 直前に起きたこと: 店の鍵を開けたら、新刊コーナーの前で篠崎がPOPを書いていた
■ 現在の状態(篠崎凛)
- 場所: 新刊コーナーの棚の前
- 感情: 雨で客足が鈍るから、POPで補いたい。宮野が来るまでに仕上げるつもりだった
- 直前に起きたこと: 始発で来た。宮野が鍵を開ける音に振り向いた
キャラ設定シート2枚 + 演出ルール + 現在の状態。この組み合わせで出力された結果がこれ。
ドアチャイムが鳴った。まだ開店前。
篠崎が新刊コーナーの前で振り向いた。手にマーカーを持っている。足元にPOPの台紙が3枚。
「……篠崎。お前、何時から来てんの」
「6時です。雨なので、POPを増やしておこうと思いまして」
宮野は鍵をカウンターに投げた。篠崎のPOPを覗き込む。手書きの紹介文。丁寧な字。新刊のあらすじが3行でまとまっている。
「字、うまいな。読む気になる」
「……ありがとうございます。残り2枚、仕上げてしまいます」
「コーヒー買ってきたけど。ホット。飲むだろ」
宮野はコンビニ袋からカップを1つ取り出して、篠崎の横に置いた。もう1つは自分の。朝から2つ買ってきた理由は、篠崎の傘が先に傘立てにあったから。それだけだ。聞かれても、そう答える。
篠崎はマーカーを置いて、カップに両手を添えた。まだ温かい。
冒頭の「ですね」しか言わない2人とは別人になっている。宮野は「何時から来てんの」「飲むだろ」とため口で通し、篠崎は「6時です」「思いまして」と最後まで丁寧語を崩さない。感情の説明は一切ない。雨の朝に2つ買ってきたコーヒーという具体物が、言葉にしない関係性を語っている。
違うのはプロンプトの構造だけ。年上がため口、年下が敬語——この口調の非対称が、関係性の距離感をそのまま表現している。
キャラ設定プロンプトの各項目がAIの出力にどう影響するかは、AIのキャラ崩壊を構造で解決する方法でbefore/afterの比較付きで詳しく分析している。
まとめ
- ChatGPTのキャラ設定プロンプトは「性格:クール」の一行では機能しない。6項目に分解して構造化する
- 最重要は口調ルールの4点セット(一人称・語尾・セリフ例3つ・禁止語)。2人の口調を非対称にすると、AIは関係性の距離感まで出力に反映する
- 性格は「表の顔・裏の顔・矛盾」、関係性は「態度・本音」に分離すると、AIが深みのあるキャラを維持できる
この記事で紹介したキャラ設定シートのフルテンプレート(記入ガイド + BL版・夢小説版・汎用版の3ジャンル記入例付き)は、BL Prompt Kit(BOOTH)からダウンロードできる。ChatGPTとClaude対応。テンプレートをコピーして、自分のキャラの名前を入れるだけで使える。 BL小説の書き方をnoteでも解説している: ChatGPTでBL小説を書く方法。
キャラの設定を保存してAIに記憶させたいなら、キャラノート(β)も使える。設定シートをクラウドに保存して、必要なときにすぐ呼び出せる。
CharaNote開発日記
「AIに口調を守らせたい」——この記事で紹介したテンプレートを、もっと直感的に管理できるツールを作っています。
CharaNoteは、キャラ設定シートをAIが読める形式で保存し、どのAIツールにもワンクリックで渡せるキャラ管理アプリです。現在クローズドβに向けて開発中。
進捗や先行アクセスの案内はCharaNote公式で。