ChatGPTのキャラ設定プロンプト——「全員同じ口調」になる問題を構造で解決する
ChatGPTに「書店が舞台の小説を書いて」と頼んだ。キャラ設定は「日向遥、23歳、無口な書店員」「北条陽太、19歳、明るいバイト」。返ってきた2人の会話がこれだった。
「今日も忙しかったですね」と日向は言った。 「そうですね、でも楽しかったです」と北条は答えた。
どちらも「ですね」の丁寧語。無口なはずの日向が普通に話している。明るいはずの北条が優等生口調。キャラ設定は渡したのに、口調が完全に同じ。
原因は「設定が足りない」ことではない。「設定の構造が間違っている」。ChatGPTのキャラ設定プロンプトに必要なのは、「性格:クール」のような一行の説明ではなく、AIが口調・性格・関係性を区別できる構造化されたテンプレート。
ChatGPTのキャラ設定プロンプトに必要な6つの項目
「性格:明るい」のような一行をChatGPTに渡すと、AIは数ターンで設定を忘れる。性格・口調・状態・関係性を分離して構造化することで、AIがキャラを正確に維持できるようになる。
テンプレートの構造は以下の6項目。
【キャラクター設定シート】
■ 基本情報
- 名前 / 年齢 / 職業・立場 / 外見の特徴(3つまで)
■ 口調ルール(最重要)
- 一人称 / 二人称 / 語尾の癖 / 話し方の特徴
- 絶対に使わない言葉 / セリフ例3つ
■ 性格
- 表の顔(人前) / 裏の顔(内面) / 矛盾
■ 内面
- 最も大切にしているもの / 最も恐れていること / 自分でも気づいていない感情
■ 関係性
- 相手への態度 / 相手への本音 / 関係性の現在地
■ 現在の状態
- 場所 / 感情 / 直前に起きたこと
このテンプレートは「BL Prompt Kit」キャラ設定シートの構造です
6項目のうち、最も重要なのは口調ルール。性格や内面はAIがある程度推測できるが、口調だけは具体的に指定しないとコントロールできない。
ステップ1: 口調ルールを4点セットで指定する
口調ルールの核は一人称・語尾・セリフ例・禁止語の4点セット。
冒頭で失敗した「無口な書店員」の日向遥で埋めてみる。
■ 口調ルール(最重要)
- 一人称: 俺(ただし滅多に使わない。主語を省略する)
- 二人称: 北条(名字。仕事中は「お前」とも言わない)
- 語尾の癖: 体言止めが多い。「〜だろ」「〜だな」。疑問形を使わず断定で済ませる
- 話し方の特徴: 単語で返す。説明しない。目線や動作で伝える
- 絶対に使わない言葉: 「楽しい」「嬉しい」等の感情を直接表す形容詞。「ありがとう」も言わない
- セリフ例:
1. 「……棚、3番」(仕事の指示。最低限の単語だけ)
2. 「……いい。俺がやる」(感情が動いたとき。理由を言わない)
3. 「帰れ、北条。シフト終わってる」(北条に対して。追い返す言い方で世話を焼く)
ポイントはセリフ例が3つあること。AIは具体例から口調パターンを学習する。平常時・感情時・対人時の3パターンがあると、どの場面でも口調がブレにくい。
もう一人、「明るいバイト」の北条陽太。
■ 口調ルール(最重要)
- 一人称: 俺
- 二人称: 日向さん(先輩呼び。慣れてくると「日向」に変わる。本人は無自覚)
- 語尾の癖: 〜っすよ、〜じゃないですか(くだけた敬語。距離が近づくと敬語が外れる)
- 話し方の特徴: 話が長い。思いついたことをそのまま口にする。沈黙が苦手で埋めようとする
- 絶対に使わない言葉: 皮肉。人を傷つける言葉。ネガティブな断定
- セリフ例:
1. 「あ、日向さんそれ面白いんすか? 俺も読みたいっす」(平常時。距離が近い)
2. 「……っ、すんません。なんでもないっす」(動揺したとき。声が小さくなる)
3. 「日向さん、めちゃ寒くないすか。缶コーヒー買ってきたんで」(日向に対して。世話焼き)
2人の口調ルールを並べて対比する形でプロンプトに入れる。AIは「この2人は違う喋り方をする」と認識しやすくなる。
AI小説の口調が崩れる3つの原因では、この口調ルールが長い会話でも維持される仕組みと、崩れたときの修正方法を解説している。
ステップ2: 性格と関係性で「深み」を作る
口調ルールで「どう喋るか」を決めたら、次は「なぜそう喋るか」を設定する。
性格は表の顔・裏の顔・矛盾の3層で書く。
■ 性格(日向遥)
- 表の顔: 寡黙で近寄りがたい。仕事は正確だが愛想がない
- 裏の顔: 人と関わるのが怖いだけ。話しかけられると内心うろたえている
- 矛盾: 「一人が楽」と言いながら、北条が休みの日は棚整理のペースが落ちる
「矛盾」が最も重要。AIに矛盾を与えると、行動と内面のギャップが出力に反映される。「一人が楽」と言うキャラが、特定の相手がいないと落ち着かない——このズレが物語を動かす。
関係性は態度と本音を分離して書く。
■ 関係性(日向遥 → 北条陽太)
- 北条に対する態度: 仕事以外の会話を避ける。でも北条が話しかけてきても追い払わない
- 北条に対する本音: 「うるさい」と思っているのに、声がしないと妙に静かに感じる
- 関係性の現在地: 先輩と後輩。日向は北条への感情にまだ名前をつけていない
「態度」と「本音」を分けると、AIは行動(素っ気ない)と内面(気にしている)のギャップを表現できるようになる。設定を一行に詰め込むより、この2つを分けて書く方がAIの出力は格段に良くなる。
ステップ3: 設定シートを貼り付けてシーンを書かせる
6項目を埋めたら、ChatGPTに貼り付けてシーンを書かせる。ここで重要なのが、演出ルールと現在の状態をキャラ設定シートと一緒に渡すこと。
【演出ルール】
- 感情は説明しない。表情・沈黙・動作・セリフだけで表現する
- 「嬉しかった」「悲しかった」のような心情説明は禁止
- 感情が高ぶるほど言葉を少なく、動作を小さくする
■ 現在の状態(日向遥)
- 場所: 閉店後の書店バックヤード
- 感情: 疲労。でも北条がまだ残っていることに少しだけ安堵している(自覚なし)
- 直前に起きたこと: 棚卸し作業を黙々と1人で進めていた
■ 現在の状態(北条陽太)
- 場所: バックヤードの入口
- 感情: 日向に帰れと言われるのはわかっている。缶コーヒーを渡してから帰りたい
- 直前に起きたこと: シフトは終わっていたが、自販機でコーヒーを2本買った
キャラ設定シート2枚 + 演出ルール + 現在の状態。この組み合わせで出力された結果がこれ。
足音が聞こえた。スニーカーの、軽い音。
「日向さん、まだいたんすね」
振り返らない。手元の在庫リストに目を落としたまま、「シフト終わってる」とだけ返した。
「知ってます。これ置いときますね」
缶コーヒーが、リストの横に置かれた。微糖。前に一度、日向が自販機で買っていたのを覚えていたのだろう。
北条は立ったままだった。帰る気配がない。
「……座れ。立ってると邪魔」
北条が笑った。段ボールの上に腰を下ろす音。
缶を開けた。微糖。当たりだ。いつから好みを知っていたのか、聞かない。聞いたら何かが変わる気がした。
冒頭の「ですね」「ですます」しか言わない2人とは別人になっている。日向は「シフト終わってる」と最低限の言葉で返し、北条は「知ってます」と素直に受け止める。感情の説明は一切ない。缶コーヒーの「微糖」という具体物が、言葉にしない関係性を語っている。
違うのはプロンプトの構造だけ。
キャラ設定プロンプトの各項目がAIの出力にどう影響するかは、AIのキャラ崩壊を構造で解決する方法でbefore/afterの比較付きで詳しく分析している。
まとめ
- ChatGPTのキャラ設定プロンプトは「性格:クール」の一行では機能しない。6項目に分解して構造化する
- 最重要は口調ルールの4点セット(一人称・語尾・セリフ例3つ・禁止語)。これがキャラの「声」の骨格になる
- 性格は「表の顔・裏の顔・矛盾」、関係性は「態度・本音」に分離すると、AIが深みのあるキャラを維持できる
この記事で紹介したキャラ設定シートのフルテンプレート(記入ガイド + BL版・夢小説版・汎用版の3ジャンル記入例付き)は、BL Prompt Kit(BOOTH)からダウンロードできる。ChatGPTとClaude対応。テンプレートをコピーして、自分のキャラの名前を入れるだけで使える。
キャラの設定を保存してAIに記憶させたいなら、キャラノート(β)も使える。設定シートをクラウドに保存して、必要なときにすぐ呼び出せる。