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2026-04-01ChatGPT 二次創作 プロンプト

ChatGPTで二次創作プロンプトを書くコツ——推しの口調を崩さない設計術

ChatGPTで二次創作プロンプトを書くコツ——推しの口調を崩さない設計術

推しの二次創作をChatGPTに書かせてみた。「九条凪、17歳、剣道部副部長。寡黙で不器用」と設定を渡して、大会前夜のシーンを頼んだ。返ってきたのがこれだった。

「明日の大会、頑張りましょうね」と九条は後輩に優しく微笑んだ。「みんなで力を合わせれば、きっと大丈夫です」

——誰だこれは。寡黙なはずの九条が、朝礼の先生みたいなことを言っている。問題はChatGPTの性能ではない。プロンプトの構造が足りていない。

「推しの性格を書いただけ」のプロンプトが失敗する理由

二次創作には、オリジナル小説にはない難しさがある。読者が原作キャラを知っている

「寡黙」と一言書いただけでは、ChatGPTは「寡黙=言葉が少なめの人」程度の解釈しかしない。結果、「優しく微笑む」「頑張りましょう」のような、無難で当たり障りのないセリフが出てくる。

原作ファンが違和感を覚えるのは、口調やセリフの選び方、感情の見せ方——つまり**「その推しらしさ」の解像度が低い**部分。「性格:ツンデレ」では情報が足りない。ChatGPTがキャラを再現するには、推しの「らしさ」をプロンプトの構造に翻訳する必要がある。

具体的には、3つの層に分けて渡す。

原作キャラをプロンプトに「翻訳」する3つの層

層1: 口調ルール——「何を言うか」ではなく「どう言うか」

推しの口調を以下の項目に分解して書き出す。

■ 口調ルール
- 一人称: 俺
- 語尾の癖: 断定形(「〜だ」「〜だろ」)。疑問形をほとんど使わない
- 話し方の特徴: 一文が短い。接続詞を省く。必要最小限しか話さない
- 絶対に使わない言葉: 「頑張ろう」「大丈夫」等の励まし。感情の直接的な言語化
- セリフ例:
  1.「……ああ」(肯定。これだけで会話を終わらせる)
  2.「邪魔だ、退け」(苛立ち。理由は言わない)
  3.「……竹刀、置いてけ。明日使う」(配慮。ただし直接は言わない)

コツは、原作からセリフを3本抜き出すこと。**「平常時」「感情が動いたとき」「相手に気を遣うとき」**の3パターンがあれば、AIはかなり正確に口調を再現する。

キャラ設定プロンプトの全体構造についてはChatGPTのキャラ設定プロンプト——6項目テンプレートの解説で詳しく掘り下げている。

層2: 演出ルール——「感情をどう見せるか」の制約

口調だけでは足りない。ChatGPTは放っておくと「嬉しかった」「悲しかった」と感情を地の文で説明してしまう。二次創作で読者が求める「らしさ」は、感情の見せ方にある。

【演出ルール】
- 感情は説明しない。表情・動作・沈黙だけで表現する
- 「嬉しかった」「緊張していた」のような心情説明は禁止
- 感情が高ぶるほど言葉が減り、動作が小さくなる
- 読者が感情を「推測する余白」を残す

このルールをプロンプトに足すだけで、出力の「それっぽさ」が一段階上がる。口調が長い会話でも崩れにくくなる仕組みはAI小説の口調が崩れる3つの原因で検証している。

層3: シーン指示——場面設定と「禁止事項」

最後の層は、書かせたいシーンの具体的な指定。

■ シーン指示
- 場面: 大会前日の放課後。道場で九条が一人、素振りをしている
- 登場人物: 九条凪(副部長)、柊(1年生。よく話しかけてくる後輩)
- 関係性の現在地: 九条は柊を「うるさいが筋は悪くない」と思っている。口には出さない
- 書いてほしいこと: 柊が差し入れを持ってくる。九条は受け取るが、礼を言わない
- 禁止事項: 九条に笑顔を作らせない。「ありがとう」と言わせない

「禁止事項」が二次創作では最も効く。ChatGPTは会話を「いい話」に着地させたがる。推しが絶対にやらない行動を明示することで、キャラのブレを防げる。

3つの層を重ねた出力結果

上の3層をすべて含めたプロンプトをChatGPTに渡すと、冒頭の出力がこう変わる。

素振りの音が止まった。

「九条先輩、これ」

柊がスポーツドリンクを差し出している。九条は竹刀を下ろし、ペットボトルを見た。見ただけで、手は伸ばさない。

「……そこ置いとけ」

柊が床に置く。九条は素振りを再開した。三本。四本。五本目で、竹刀を止めた。

ペットボトルのキャップを開ける音が、道場に響いた。

「ありがとう」は言わない。笑顔もない。でもドリンクを開ける——それだけで「受け取った」とわかる。冒頭の「頑張りましょうね」バージョンとは同じ設定を渡したはずなのに、別人になっている。差はプロンプトの構造だけ。

BL・夢小説・ファンタジー——ジャンル別のプロンプト調整

3層の構造は共通だが、ジャンルによって力点が変わる。

BL二次創作では、関係性の「現在の距離感」を定義するのが最重要。「まだ友人」「片方だけ自覚あり」「付き合い始めたが不器用」——どの段階かでセリフの温度が変わる。口調ルールの中に「相手をどう呼ぶか」を場面別に書き分けると、AIの精度が上がる。

夢小説では、推しキャラの「公式モード」と「二人きりモード」を分離して設定する。ファンの前で見せる顔と、読者(=夢主)の前でだけ見せる面を切り替えるプロンプト設計が鍵になる。

ファンタジー二次創作では、世界観の固有名詞(魔法名、地名、組織名)をプロンプト冒頭に「用語集」として渡す。ChatGPTが原作にない用語を勝手に作り出すのを防ぐ。「この世界に存在しない概念」をリスト化しておくのも効果的。

まとめ

二次創作プロンプトの設計は3層構造で考える。口調ルールで推しの話し方を固定し、演出ルールで感情表現を制御し、シーン指示禁止事項でキャラのブレを封じる。

「性格:クール」の一行では伝わらない「推しらしさ」を、AIが再現できるレベルまで分解する。口調ルール・演出ルール・シーン生成のフルテンプレートはBL Prompt Kit(BOOTH)で公開している。キャラ設定シートから状態管理まで5種のテンプレートで、長編の二次創作にも対応できる。