ChatGPTに再会のシーンを書かせた。返ってきたのがこれ。
戸倉は瀬尾を見て驚いた。2年ぶりの再会に胸が高鳴った。瀬尾も嬉しそうに微笑んでいた。
「驚いた」「高鳴った」「嬉しそう」——感情を全部説明している。読者が何かを感じ取る前に、AIが答えを書いてしまった。
同じ設定で、プロンプトの構造だけ変えた結果がこれ。
「……鍵、開いてたのか」
戸倉は瀬尾のカメラバッグを見た。ストラップが新しくなっている。以前は革の、使い込んだやつだった。
「……ああ。靴、替えろ。床に砂が入る」
「嬉しい」は一度も出てこない。だがストラップの変化に気づく視線が、2年間その記憶を持っていたことを示す。「靴、替えろ」が不器用な受け入れの合図になっている。
この差を生んでいるのはプロンプトの感情の強度設計。5段階のメソッドとして体系化する。
AIの感情描写が「報告書」になる理由
「嬉しかった」と書いた瞬間、読者の感情は動かない。 動作や沈黙から読者が自分で気づいたとき——初めて読者の中に感情が生まれる。
AI小説の「AI臭い」を直す方法の「演出ルール」はこの問題の第一歩を解決する。だが演出ルールだけでは足りない。AIは全ての感情を同じ強度で描いてしまう。「ちょっと気になる」も「抑えきれない」も同じ密度で処理し、感情の起伏が伝わらない。
これを解決するのが、感情を5段階に分類しレベルごとに描写テクニックを変える方法。
感情の5段階モデル——強度で描写を切り替える
天文台の観測技師・戸倉と科学ライター・瀬尾の関係を通して、各レベルの描写テクニックを示す。プロンプトには以下の形式で感情レベルを指定する。
【感情設計】
- 描写レベル: {1-5}
- 表現手段: {レベルに応じた手段}
- 禁止: 心情説明、指定レベルを超える描写
レベル1: まだ気づいていない感情——小道具で暗示する
キャラ自身が感情に気づいていない段階。小道具の選択で読者だけに気づかせる。
観測室のサイドテーブルに、マグカップが2つ並んでいた。片方は戸倉の、取っ手の欠けたステンレス。もう片方は白い陶器で、棚の奥から出してきたものだった。
読者は気づく——わざわざ棚の奥からカップを出していること。プロンプトでは「何を感じているか」ではなく「何を選ぶか」を指定する。
レベル2: 自覚し始めた感情——無意識の動作から漏れる
「あれ?」と気づき始めた段階。表現手段は手の動き、視線の逸脱、発話タイミングのズレ。
「……15年」
答えが早すぎた。普段ならこの手の質問には「場合による」で濁す。ファインダーに目を戻した。ピントが合っていなかった。
レベル2の核は**「いつもの行動パターン」からの微小なズレ**。ズレを描くにはキャラ設定でデフォルトの行動パターンを明示しておく。
レベル3: 抑えている感情——沈黙と「言いかけてやめる」
感情に気づいているが、出さないと決めている段階。表現手段は言いかけてやめる、話題を変える、物理的距離を取る。
「あの、次に来るとき——」
「観測対象を変える。西に30度」
モーターの音がドームを満たした。瀬尾の言葉の続きは、その音に埋もれた。
隠そうとする行為そのものが感情の強さを裏切る構造。AI小説のセリフを自然にする方法の「沈黙で返す」テクニックと相性がいい。
レベル4: 溢れ出す感情——文のリズムが崩壊する
抑えていたものが制御を超えた段階。表現手段は文の短縮、体言止めの連続、普段使わない言葉。
動かさなかった。
コンソールの前に座る。モニターをつける。今夜の観測対象を入力する。指が、動かない。
普段のリズムが崩壊していること自体が感情の溢れを表現する。
レベル5: 感情の爆発——言葉が剥がれ落ちる
キャラの「らしさ」が一時的に崩壊する段階。表現手段は普段と真逆の行動、口調の変化、身体の制御不能。1作品に1回まで。
「——待て」
声が出ていた。誰の声かわからなかった。素足だった。スリッパを履く余裕がなかった。コンクリートが冷たい。それだけが明確だった。
寡黙な戸倉が「待て」と叫び、スリッパも履かずに外に出る。クライマックスだけに使うから効く。
5段階モデルの全レベルのプロンプトテンプレートと、BL・夢小説・ファンタジーのジャンル別記入例はBL Prompt Kit(BOOTH)に収録している。
感情設計シート——シーンの前に「設計」する
シーンを書く前に以下のシートをプロンプトに追加する。
【感情設計シート】
■ キャラA({名前}): {感情の内容} → レベル{1-5}
■ キャラB({名前}): {感情の内容} → レベル{1-5}
■ 禁止: 心情説明、指定レベルを超える描写
1章でレベル1→2、中盤でレベル3、クライマックスでレベル5——こうした設計があるとAIは感情の強度を区別できる。AI小説のキャラ感情が薄い原因と対策の「感情の3層モデル」と組み合わせると精度がさらに上がる。
キャラノート(β)でキャラごとの感情レベルの推移を管理すると、シーンを書くたびに「現在の状態」を正確にAIへ渡せる。
まとめ
感情の強度を5段階で区別し、段階ごとに描写を切り替えることで、AIの出力に起伏が生まれる。まず1シーン、レベル1の「小道具で暗示」から試してみてほしい。全テンプレートとジャンル別記入例はBL Prompt Kit(BOOTH)に収録している。
CharaNote開発日記
「AIに口調を守らせたい」——この記事で紹介したテンプレートを、もっと直感的に管理できるツールを作っています。
CharaNoteは、キャラ設定シートをAIが読める形式で保存し、どのAIツールにもワンクリックで渡せるキャラ管理アプリです。現在クローズドβに向けて開発中。
進捗や先行アクセスの案内はCharaNote公式で。