Claudeで小説を書くプロンプトの作り方——「密度のある一行」を引き出す3ステップ
「Claude、小説うまいって聞いたのに……結局いい話で終わるだけじゃん」
プロンプトを打ち直す。出力をスクロールする。「もっと自然に」と追記して再生成する。Claudeの文章は確かに丁寧だ。でも読み返すと「嬉しかった」「切なかった」が並んでいて、小説というより読書感想文に近い。
原因はClaudeの性能ではなく、プロンプトの構造にあります。キャラ設定・演出ルール・シーン指示の3つを正しく渡せば、「感情を一切説明していないのに、読者の胸に残る一行」をClaudeは書けます。
Claudeの小説が「密度が高い」と言われる構造的な理由
Claudeが小説に向いていると言われる理由は「書かないこと」にあります。
ChatGPTはセリフを5〜6個生成し、場所を移動しながらシーンを展開します。読者を飽きさせない「量」の戦略です。一方、Claudeはセリフを2〜3個に絞り、ひとつの場面の中で動作と本音の矛盾を仕込みます。「密度」の戦略です。
たとえば「帰れよ」と言いながら隣に並ぶ。言葉と行動が矛盾する描写を、Claudeは自然に生成します。この矛盾が読者の中で感情を「生成」させる。説明しないからこそ、読者が自分で気づく構造です。
ただし、この密度はプロンプトが構造化されていないと発揮されません。「小説を書いて」だけでは、Claudeも他のAIと同じく感情を説明する文章を出力します。
密度を引き出すには、3つのステップでプロンプトを設計する必要があります。
ChatGPTとClaudeの出力傾向の違いは「ChatGPTとClaude、小説に使うならどっち?——同じプロンプトで出力を比較した」で詳しく検証しています。
ステップ1: キャラの「声」を構造化してClaudeに渡す
「性格: クールで優しい」——この一行だけでは、Claudeは3ターンで設定を忘れます。
キャラ設定で最も重要なのは口調ルールです。性格や見た目ではなく、そのキャラがどう喋るかを構造化します。
具体的には、次の4点セットで指定します。
■ 口調ルール
- 一人称: 俺
- 語尾の癖: 〜だろ、〜だな(断定が多い)
- セリフ例(3つ):
1.「……別に。そう思っただけだ」(平常時)
2.「黙れ。……頼むから」(感情が高ぶったとき)
3.「釉薬、変えた。それだけだ」(相手に対して)
- 絶対に使わない言葉: 「すごい」「嬉しい」等の感情直接表現
ポイントはセリフ例を3つ書くこと。Claudeにとって、セリフ例は口調学習の最重要データです。抽象的な性格説明より、実際のセリフ1行のほうが精度は高い。
この4点セットに加えて、「表の顔」「裏の顔」「矛盾」の3層で性格を指定すると、Claudeは動作と本音のズレを自力で仕込み始めます。構造化されたキャラ設定シートの全項目は「ChatGPTのキャラ設定プロンプト——AIに「声」を覚えさせる6項目テンプレート」で解説しています。
このテンプレートの全パターン(攻め・受け両対応)はBL Prompt Kit(BOOTH)でダウンロードできます。
ステップ2: 演出ルールでClaudeの「説明グセ」を封じる
キャラ設定だけでは足りません。Claudeは指示がなければ「嬉しかった」「心が温かくなった」と感情を説明してしまいます。
これを防ぐのが演出ルールです。プロンプトに以下の4行を追加するだけで、出力が変わります。
【演出ルール】
- 感情は説明しない。表情・沈黙・動作・セリフだけで表現する
- 「嬉しかった」「悲しかった」のような心情説明は禁止
- 感情が高ぶるほど言葉を少なく、動作を小さくする
- 読者が自分の心の中で感情を「生成」するように設計する
同じシーンで演出ルールの有無を比較してみます。陶芸家の御堂が、取材に来たライターの篠崎に完成した器を見せる場面です。
演出ルールなし(before) 御堂は篠崎に完成した器を見せた。篠崎はその美しさに感動した。「すごいですね」と素直に言った。御堂は嬉しかったが、照れくさくて何も言えなかった。二人の間に温かい空気が流れた。
演出ルールあり(after) 御堂が窯から取り出した器を、作業台の端に置いた。篠崎はノートを閉じ、立ち上がった。指先が器の縁をなぞる。止まる。 「……釉薬、変えましたか」 「灰の配合を変えた」 御堂はそれだけ言って、次の器に手を伸ばした。篠崎の指がまだ縁に触れていることには、気づかないふりをした。
▶ 変えたのは「感情を直接説明する代わりに、指先の動きと沈黙で関係性を暗示する」だけ。
beforeでは「感動した」「嬉しかった」「温かい空気」と感情が全部説明されています。afterでは感情を一切書いていないのに、二人の距離感が伝わる。Claudeは「書くな」と指示すると、代わりに動作で語る能力が高いのです。
AI臭い表現を徹底的に消したい方は「AI小説の「AI臭い」を直す3つの方法——感情説明をやめるだけで文章が変わる」でさらに掘り下げています。
ステップ3: シーン指示のプロンプトで「密度」を設計する
キャラ設定と演出ルールを用意したら、最後にシーンの「設計図」を渡します。
Claudeに「いい感じに書いて」は通用しません。代わりに、ゴール・感情の方向・禁止事項の3点でシーンを設計します。
【シーンの演出指示】
■ このシーンのゴール:
篠崎が御堂の作品に触れ、御堂がそれを黙認する
■ 感情の方向:
御堂: 警戒 → 動揺(篠崎の反応がいつもの取材と違う)
篠崎: 職業的な興味 → 個人的な感情が混じりかける
■ キーワード:
- 指先
- 灰の匂い
- ノートを閉じる
■ 禁止事項:
- 御堂に笑顔を見せさせない
- 篠崎に「きれい」「素敵」と言わせない
- 二人を目を合わせさせない
禁止事項がこのテンプレートの核です。 Claudeは放っておくと「いい話」に着地させたがります。「笑わせない」「褒めさせない」「目を合わせさせない」と縛ることで、AIは別の表現を探し始める。指先の動き、沈黙の長さ、視線の外し方——制約が表現を生みます。
さらに精度を上げたい場合は、本文の前に「演出ノート」を出力させる方法があります。各キャラの心情と、感情をどの動作で表現するかをClaude自身に言語化させてから本文を書かせると、感情の流れが一貫します。これはBL Prompt Kitで「Director-Actor方式」と呼んでいるテクニックです。
Claude固有の注意点——出力量と口調の「揺れ」
Claudeで小説を書くとき、2つの特性を押さえておきましょう。
1. 出力量を数字で指定する。 「詳しく書いて」と指示すると、Claudeは際限なく膨らませます。「800字程度で」「セリフは3つ以内で」のように数字で制限をかけてください。
2. 口調の「揺れ」は仕様。 Claudeはキャラ設定を踏まえつつ、口調を意図的に「揺らす」傾向があります。いつも敬語のキャラがふと呼び捨てにする——小説としては効果的な場合もありますが、意図しない揺れの場合は口調リマインドを5〜10ターンごとに送ります。
【口調リマインド】
- 一人称: 俺
- 語尾: 〜だろ、〜だな
- 絶対に使わない言葉: 感情の直接表現
この3行をシーンの区切り目に貼り付けるだけで、口調の崩壊は大幅に防げます。
まとめ
Claudeから密度のある小説を引き出すプロンプトは、3ステップで設計します。
- キャラの「声」を構造化する——口調ルール4点セット(一人称・語尾・セリフ例・禁止語)
- 演出ルールで説明グセを封じる——感情は動作と沈黙で語らせる
- シーン指示で密度を設計する——禁止事項でAIの表現を引き出す
「密度のある一行」は、Claudeの性能ではなくプロンプトの構造から生まれます。この3ステップのテンプレート全パターン(BL・夢小説・二次創作対応)はBL Prompt Kit(BOOTH)でダウンロードできます。