「Claude、小説うまいって聞いたのに……結局いい話で終わるだけじゃん」
プロンプトを打ち直す。出力をスクロールする。「もっと自然に」と追記して再生成する。文章は丁寧だ。でも読み返すと「嬉しかった」「切なかった」が並んでいて、読書感想文に近い。
原因はClaudeの性能ではなく、プロンプトの構造にある。キャラ設定・演出ルール・シーン指示の3層を正しく渡せば、Claudeは「感情を一切書いていないのに胸に残る一行」を出力する。この特性を引き出すテンプレートを5つ紹介する。
ステップ1: キャラの「声」を構造化してClaudeに渡す
「性格: クールで優しい」——この一行だけでは、Claudeは3ターンで設定を忘れる。
キャラ設定で最も重要なのは口調ルールだ。そのキャラがどう喋るかを次の4点セットで構造化する。
■ 口調ルール
- 一人称: 俺
- 語尾の癖: 〜だろ、〜だな(断定が多い)
- セリフ例(3つ):
1.「……別に。そう思っただけだ」(平常時)
2.「黙れ。……頼むから」(感情が高ぶったとき)
3.「版、組み直した。それだけだ」(相手に対して)
- 絶対に使わない言葉: 「すごい」「嬉しい」等の感情直接表現
ポイントはセリフ例を3つ書くこと。抽象的な性格説明より、実際のセリフ1行のほうが精度は高い。さらに「表の顔」「裏の顔」「矛盾」の3層で性格を指定すると、Claudeは動作と本音のズレを自力で仕込む。キャラ設定シートの全項目は「ChatGPTのキャラ設定プロンプト——AIに「声」を覚えさせる6項目テンプレート」で解説している。
自分のキャラに当てはめる空テンプレートも載せておく。
■ 口調ルール
- 一人称: {一人称}
- 語尾の癖: {語尾の特徴}(例: 断定が多い、語尾を濁す等)
- セリフ例(3つ):
1.「{平常時のセリフ}」(平常時)
2.「{感情が高ぶったときのセリフ}」(感情が高ぶったとき)
3.「{相手への一言}」(相手に対して)
- 絶対に使わない言葉: {禁止語リスト}
このテンプレートの全パターン(攻め・受け両対応+ジャンル別記入例付き)はBL Prompt Kit(BOOTH)でダウンロードできる。
ステップ2: 演出ルールでClaudeの「説明グセ」を封じる
キャラ設定だけでは足りない。指示がなければClaudeも感情を説明する。これを防ぐのが演出ルールだ。プロンプトに4行追加するだけで出力が変わる。
【演出ルール】
- 感情は説明しない。表情・沈黙・動作・セリフだけで表現する
- 「嬉しかった」「悲しかった」のような心情説明は禁止
- 感情が高ぶるほど言葉を少なく、動作を小さくする
- 読者が自分の心の中で感情を「生成」するように設計する
同じシーンで演出ルールの有無を比較する。活版印刷職人の菅野が、取材に来たルポライターの比嘉に刷り上がったばかりの一頁を見せる場面だ。
演出ルールなし(before) 菅野は比嘉に刷り上がった一頁を見せた。比嘉はその美しさに感動した。「すごいですね」と素直に言った。菅野は嬉しかったが、照れくさくて何も言えなかった。二人の間に温かい空気が流れた。
演出ルールあり(after) 菅野がインクの匂いが残る一頁を、作業台の端に置いた。比嘉はメモ帳を閉じ、立ち上がった。指先が活字の凹凸をなぞる。止まる。 「……この書体、組み直しましたか」 「行間を二分詰めた」 菅野はそれだけ言って、次の版に手を伸ばした。比嘉の指がまだ紙面に触れていることには、気づかないふりをした。
▶ 変えたのは「感情を直接説明する代わりに、指先の動きと沈黙で関係性を暗示する」だけ。
beforeでは「感動した」「嬉しかった」と感情が全部説明されている。afterでは何も説明されていないのに、読者は「気づかないふり」の一文から菅野の本音を自分で推測する——推測が当たった瞬間に感情が「刺さる」。Claudeは「書くな」と指示すると、代わりに動作で語る力が強い。
AI臭い表現をさらに消す方法は「AI小説の「AI臭い」を直す3つの方法」で掘り下げている。
ステップ3: シーン指示のプロンプトで「密度」を設計する
最後にシーンの「設計図」を渡す。ゴール・感情の方向・禁止事項の3点で設計する。
【シーンの演出指示】
■ このシーンのゴール:
比嘉が菅野の作品に触れ、菅野がそれを黙認する
■ 感情の方向:
菅野: 警戒 → 動揺(比嘉の反応がいつもの取材と違う)
比嘉: 職業的な興味 → 個人的な感情が混じりかける
■ キーワード:
- 指先
- インクの匂い
- メモ帳を閉じる
■ 禁止事項:
- 菅野に笑顔を見せさせない
- 比嘉に「きれい」「素敵」と言わせない
- 二人を目を合わせさせない
禁止事項がこのテンプレートの核だ。 Claudeは放っておくと「いい話」に着地させる。「笑わせない」「褒めさせない」「目を合わせさせない」と縛ると、AIは別の表現を探し始める。制約が表現を生む。
自分のシーンに使える空テンプレートを載せておく。
【シーンの演出指示】
■ このシーンのゴール:
{シーンの到達点を1文で}
■ 感情の方向:
{キャラA}: {開始感情} → {到達感情}({変化のきっかけ})
{キャラB}: {開始感情} → {到達感情}({変化のきっかけ})
■ キーワード:
- {小道具や感覚}
- {場所の特徴}
- {身体動作}
■ 禁止事項:
- {キャラA}に{安易な反応}をさせない
- {キャラB}に{ありきたりな台詞}を言わせない
- 二人を{直接的な接触}させない
ChatGPTとClaudeの使い分け——Projectsで差がつく理由
3ステップの設定を毎回コピペするのは現実的ではない。Claude Projectsなら、キャラ設定と演出ルールを「プロジェクトの知識」として固定できる。
- claude.aiで「Projects」を開き、新規プロジェクトを作成
- 「Project knowledge」にステップ1の口調ルールとステップ2の演出ルールをアップロード
- チャットではステップ3のシーン指示だけを送る
5万字のシリーズでも10話目で口調が崩れない。
ChatGPTのメモリ機能は断片的な箇条書きを自動保存する仕組みで、口調ルールのような構造化データの保持は苦手だ。Projectsはファイル単位で設定を保持するため、キャラ設定シートをそのまま渡せる。長編で設定を崩さず書くなら、Projectsが有利だ。
逆にChatGPTが向いているのは「短編の量産」だ。GPT-4oは出力速度が速く、掌編や会話劇を大量に試すなら効率がいい。じっくり1シーンの密度を追い込むならClaude、手数で試行回数を稼ぐならChatGPTという使い分けが合理的だ。
Projectsの詳細は「Claude Projectsで小説を書く方法」で、出力の違いは「ChatGPTとClaudeの小説を比較」で検証している。
まとめ
Claudeから密度のある小説を引き出すプロンプトは、3ステップで設計する。
- キャラの「声」を構造化する——口調ルール4点セット(一人称・語尾・セリフ例・禁止語)
- 演出ルールで説明グセを封じる——感情は動作と沈黙で語らせる
- シーン指示で密度を設計する——禁止事項でAIの表現を引き出す
Claude Projectsに設定をアップロードしておけば、毎回のプロンプトはシーン指示だけで済む。この3ステップのテンプレート全パターン(BL・夢小説・二次創作対応+記入例付き)はBL Prompt Kit(BOOTH)でダウンロードできる。BL小説の書き方はnoteでも解説している: ChatGPTでBL小説を書く方法。
CharaNote開発日記
「AIに口調を守らせたい」——この記事で紹介したテンプレートを、もっと直感的に管理できるツールを作っています。
CharaNoteは、キャラ設定シートをAIが読める形式で保存し、どのAIツールにもワンクリックで渡せるキャラ管理アプリです。現在クローズドβに向けて開発中。
進捗や先行アクセスの案内はCharaNote公式で。