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2026-04-02AI 同人小説 書き方 コツ

AI同人小説の書き方——「刺さるワンシーン」を3ステップで仕上げるコツ

AI同人小説の書き方——「刺さるワンシーン」を3ステップで仕上げるコツ

「書きたいシーンは頭にあるのに、AIに渡すと全然違うものが返ってくる……」

推しカプの帰り道のシーンを書きたかった。ChatGPTに設定を渡したら、攻めがいきなり「好きだよ」と告白して500字で終わった。2,000字の同人小説のはずが、開始3行でクライマックスに到達している。画面を閉じた。スクロールバーすら動かなかった——。

AIで同人小説を書くとき、「設定を渡せば書いてくれる」と思うと失敗する。AIは設定を読んでも、どの瞬間を、どのくらいの密度で書くかを判断できない。刺さるワンシーンを仕上げるコツは3つだけ。

ステップ1: 書きたいシーンを「ト書き」にする

同人小説で一番大事なのは「どのシーンを書くか」の選択。AIに「恋愛シーンを書いて」と渡すと、AIは最も平均的な恋愛シーンを出力する。つまり、刺さらない。

刺さるシーンの正体は「動詞3つ」で説明できる場面。

例えば「深夜のジムでストレッチを手伝う」シーン。ここに動詞を3つ入れる:

園部が鶴見の肩甲骨を押す → 鶴見が息を止める → 園部の手が一瞬止まる

この3動詞がシーンの骨格になる。AIにはこれをト書き形式で渡す。

■ シーン指示
場所: 深夜のフィットネスジム、ストレッチエリア
時間: 23時過ぎ。他の客はいない
状況: 園部が鶴見のストレッチを補助している。鶴見は肩を痛めている

■ シーンの動線(この順番で書くこと)
1. 園部が鶴見の肩甲骨を押す。力加減を探りながら
2. 鶴見が息を止める。痛みではなく、距離の近さに
3. 園部の手が一瞬止まる。気づいたのか、気づかないふりなのか、読者にはわからないようにする
4. 園部が「もう少し伸ばすよ」と何事もなかったように続ける
5. 鶴見がイヤホンの片方を外す(しかし何も言わない)

ポイントは**「読者にはわからないようにする」**の一文。AIに「曖昧さを残せ」と指示することで、読者の解釈の余地が生まれる。同人小説で読者が一番萌えるのは、「これは好意なのか?」と読者自身が考える瞬間。

舞台演出でいう「間」の設計と同じ原理。俳優は意図的に動作を止めることで観客の注意を集める。AIにも「止まる」「外す」「何も言わない」といった不動の動詞を指示すると、シーンに張力が生まれる。

AIで同人誌の小説原稿を作る方法では企画から脱稿までの全工程を解説しているが、本記事ではこの「ワンシーン」の密度を上げることだけに集中する。

ステップ2: キャラの声をAIに「再演」させる

シーンの骨格ができたら、次はキャラの声。

AIにキャラを演じさせるのは、舞台俳優に台本を渡す作業に近い。台本だけでは棒読みになる。俳優は本番前に役の身体の癖——歩き方、座り方、物の取り方——を自分の体に落とし込む。AIも同じで、「性格:ワンコ系」だけでは棒読みの出力が返ってくる。

口調を安定させる最小セットは、一人称・語尾・セリフ例3つ・禁止語の4点。

■ 口調ルール
【園部真(攻め・パーソナルトレーナー・32歳)】
- 一人称: 俺
- 語尾: 〜だよ、〜じゃん(軽い。断定しない)
- セリフ例:
  1.「いいじゃん、もう一セットだけ」(普段)
  2.「……ごめん。力入りすぎた」(距離が近くなった瞬間)
  3.「鶴見さんって、ほんと頑固だよな」(相手に対して)
- 禁止: 敬語全般。「好き」「可愛い」の直接表現

【鶴見啓(受け・スポーツライター・30歳)】
- 一人称: 俺
- 語尾: 〜だろ、〜だけど(素っ気ない。でも語尾に余韻を残す)
- セリフ例:
  1.「……別に。肩が凝ってただけだ」(照れ隠し)
  2.「うるさい。黙ってストレッチしてろ」(動揺時)
  3.「あんたに心配されるほど弱ってないけど」(園部に対して)
- 禁止: 素直な感謝。「ありがとう」は最後に一度だけ

このテンプレートは「BL Prompt Kit」キャラ設定シートの一部です

自分の推しカプで使える空テンプレート:

■ 口調ルール
【{キャラA名}({攻め/受け}・{職業}・{年齢}歳)】
- 一人称: {一人称}
- 語尾: {語尾パターン2つ}({語尾の特徴を一言で})
- セリフ例:
  1.「{平常時のセリフ}」(普段)
  2.「{感情が揺れた時のセリフ}」({どんな状況か})
  3.「{相手に対するセリフ}」(相手に対して)
- 禁止: {このキャラが絶対に言わない言葉3つ}

【{キャラB名}({攻め/受け}・{職業}・{年齢}歳)】
- 一人称: {一人称}
- 語尾: {語尾パターン2つ}({語尾の特徴を一言で})
- セリフ例:
  1.「{平常時のセリフ}」(普段)
  2.「{感情が揺れた時のセリフ}」({どんな状況か})
  3.「{相手に対するセリフ}」(相手に対して)
- 禁止: {このキャラが絶対に言わない言葉3つ}

BL版・夢小説版の2ジャンルの記入例と、ジャンル別の口調パターン全集はBL Prompt Kit(BOOTH)のフルキットに収録されている。

ステップ3: AIの出力を「研ぐ」——削って密度を上げる

ステップ1のシーン指示とステップ2の口調ルールを一緒にAIに渡すと、まず「素材」が出力される。この段階では80点の完成度を期待すればいい。

問題は残り20点をどう詰めるか

AIの出力でよくある問題は「説明しすぎ」。キャラの感情を地の文で解説してしまう。「園部は鶴見のことが気になっていた」「鶴見は照れを隠すように目を逸らした」——こういう文がAIの出力に混じっていたら、全部削る。

削った跡に「動作」を1つ入れる。

  • 「気になっていた」→ 「園部はタオルを畳み直した」
  • 「照れを隠すように」→ 「鶴見はイヤホンのコードを巻いた」

AIに修正指示を出すときのプロンプト:

以下のルールで修正してください:
- 「〜と感じた」「〜と思った」を全て削除し、代わりにキャラの動作を1つ入れる
- 心情を説明する地の文は書かない。動作・仕草・沈黙だけで感情を表現する
- セリフの前後に心情描写を入れない

この「削って動作に置き換える」工程が、同人小説の密度を決める。俳優が台本の棒読みから「芝居」に変わるのは、テキストを超えた身体表現が加わったとき。同じように、AIの出力が「小説」になるのは、心情説明を削って動作を入れたとき。

before/after: 同じシーンの密度が変わる

ステップ1〜3を通す前と後で、同じシーン(深夜のジムでストレッチを補助する場面)がどう変わるか。

コツを使う前 「ちょっと肩を見せて」と園部は優しく言った。鶴見は少し照れながらも肩を出した。園部は丁寧にストレッチを手伝い、「痛くない?」と聞いた。鶴見は園部の優しさに胸が温かくなった。「ありがとう」と素直に言った。

コツを使った後 園部の掌が肩甲骨の内側に入る。鶴見は息を止めた。 「……力抜いて」 無理だ。返事の代わりにイヤホンの片方を外した。BGMが右耳だけになる。 園部の指が鎖骨の手前で一瞬止まって、何事もなかったように肩のラインをなぞった。 「明日、筋肉痛くるかも」 「……あんたのせいだろ」 園部が笑った。鶴見はイヤホンを戻した。左耳に、園部の呼吸がまだ残っている。

▶ 変えたのは"シーンの動線をト書きで指定し、心情説明を動作に置き換えた"だけ。

上の例では「優しく」「照れながら」「胸が温かくなった」と感情を全部説明している。読者は「そうですか」としか思えない。下の例では、鶴見がイヤホンを外す動作と、最後に「園部の呼吸がまだ残っている」という感覚描写だけで関係性を見せている。読者が勝手に「これは……」と補完する。その補完が萌え。

AI二次創作で原作を再現するコツでは、原作の文体を分析してAIに渡す方法を解説している。本記事の口調ルールと組み合わせると、さらに原作の空気に近づく。

まとめ

  • 同人小説のAI執筆は「書きたいシーンをト書きにする → キャラの声を4点セットで固定する → 出力から心情説明を削って動作に置き換える」の3ステップ
  • AIに「曖昧さを残せ」と指示すると、読者の解釈の余地が生まれて萌えの密度が上がる
  • 「AIが書いた80点の素材」を「人間が研ぐ20点」が同人小説の完成度を決める

シーン設計・口調ルール・演出ルールの全テンプレート——BL版・夢小説版・汎用版の3ジャンル記入例付き——はBL Prompt Kit(BOOTH)で配布している。推しカプの設定を埋めるだけで、そのままAIに渡せる形式。

CharaNote開発日記

「AIに口調を守らせたい」——この記事で紹介したテンプレートを、もっと直感的に管理できるツールを作っています。

CharaNoteは、キャラ設定シートをAIが読める形式で保存し、どのAIツールにもワンクリックで渡せるキャラ管理アプリです。現在クローズドβに向けて開発中。

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