ChatGPTに「BLの同人誌を書いて」と投げたら、3,000字のありきたりな短編が返ってきた。キャラは薄く、展開は読めて、語尾だけ丁寧——。「続きを書いて」の繰り返しでは同人誌にはなりません。AIで同人誌原稿を完成させるには、企画→キャラ設定→プロット→本文執筆→推敲の5段階を、それぞれ別のプロンプトで回します。
AIに任せる範囲を先に決める
AIが得意なのは素材の量産——アイデア出し、プロット素案、シーンの下書き、校正。テーマの決定、キャラの核となる感情、クライマックスの演出は自分の領域です。
AIの出力は1回2,000〜4,000字が上限。50ページの中編なら10〜15回のシーン生成が必要で、無計画にやると中盤で口調が変わり後半で伏線が消えます。
Step 1: 企画——テーマをAIと壁打ちする
「書きたいシーン」だけで全体像がない状態で書き始めるのが典型的な失敗です。以下のプロンプトでテーマを整理します。
同人誌小説のテーマ候補を5つ提案してください。
ジャンル: BL / 設定: 現代日本・社会人
書きたいシーン: 片方が相手の本音に気づく瞬間
避けたい展開: 三角関係、病気ネタ
各候補にテーマ・モチーフ・山場を記載
「避けたい展開」を明示するのがポイントです。制約がないとAIは無難な企画しか出しません。
Step 2: キャラ設定を構造化する
キャラ設定が甘いとAIはキャラを「属性の寄せ集め」で書きます。6項目のキャラシートをAIに渡してから執筆に入ります。
【キャラ設定シート】
1. 名前・年齢・職業: 長谷冬弥 / 27歳 / 中古レコード店スタッフ
2. 口調の特徴: 敬語ベースだが、動揺すると語尾が途切れる。「……いや、」が口癖
3. 他者への態度: 表面的には丁寧だが、踏み込まれると距離を取る
4. 譲れないもの: 自分の書いた物語が誰かの「逃げ場所」になること
5. 隠している弱さ: 3年前に書けなくなった理由を誰にも話していない
6. 感情表現のクセ: 感情が高ぶると手元の何かを触る(レコードの角、ペンのキャップ)
項目4「譲れないもの」と項目5「隠している弱さ」が核です。AIは行動の動機を自分で作れないため、動機に直結する項目をプロンプトに明文化します。テンプレートの詳しい構造はChatGPTキャラ設定プロンプトの作り方で解説しています。キャラシート・演出ルールセットのフルキットはBL Prompt Kit(BOOTH)に収録しています。
Step 3: プロットを章単位で設計する
各章の字数配分を先に決めることが重要です。AIは指示がないと全章均等に書きます。「転換点の章を厚く、導入と結末を薄く」が同人誌の読みやすい構成です。
中盤のたるみを防ぐには、「★感情の落差を最大にする」のような感情曲線の指示を章構成に入れます。この一言でAIは該当章に振れ幅を集中させます。プロット自動生成の手順はAI小説のプロット自動生成で解説しています。
Step 4: シーン単位で本文を書く
プロットができたら本文です。「第1章を書いて」ではなく、シーン単位でプロンプトを投げます。各シーンのプロンプトには、場所・時間帯・登場人物・シーンの目的・トーンに加え、演出ルールを必ず含めます。
【演出ルール】
- 感情は説明しない。表情・沈黙・動作・セリフだけで表現する
- 「〜と思った」「〜と感じた」のような心情説明は禁止
- 動揺するシーンでは手元の動作で表現する
この演出ルールを省くと、AIは途端に「長谷は驚いた」「胸が痛んだ」と心情説明を始めます。
before/afterで見る品質の差
演出ルールなし(before) 夏生の言葉を聞いて、長谷は驚いた。まさか自分に原稿を依頼してくるとは思わなかった。戸惑いと期待が入り混じった複雑な気持ちだった。
演出ルールあり(after) 「アンソロ、長谷さんも書かない?」 歩道橋の欄干に置いていた紙袋が傾いた。長谷の肘が、わずかに動いたのだ。指先がイヤホンのコードをたぐる。 「……締め切りは」 「来月末。短編でいいから」 長谷はイヤホンをポケットにしまった。コードの端がはみ出ていた。直さなかった。
afterでは「驚いた」「複雑な気持ち」が消え、手元の動作だけで動揺を描いています。AI臭い表現の具体的な直し方はAI小説の「AI臭い」を直す方法で扱っています。
シーン間の接続は、次のプロンプトに前シーンの末尾3行を含めれば断絶を防げます。
Step 5: 推敲——AI臭さを消す仕上げ
全章を書き終えたら、以下の3点を重点的にチェックします。
- 心情説明の削除: 「〜と思った」「〜と感じた」を検索し、動作・セリフ・沈黙に置き換える
- 口調の一貫性チェック: Step 2のキャラシートと照合し、後半のブレを修正する
- シーン間の繋ぎ: 各章の冒頭と末尾を抜き出して読み、時間経過の飛びがないか確認する
まとめ
AIで同人誌の小説原稿を書くには、5段階のプロンプト設計が必要です。
- 企画: テーマをAIと壁打ちし「避けたい展開」で方向を絞る
- キャラ設定: 6項目シートで動機まで構造化する
- プロット: 字数配分と感情曲線を先に設計する
- 本文: シーン単位で演出ルール付きプロンプトを投げる
- 推敲: 心情説明・口調ブレ・シーン接続を確認する
テンプレート一式(キャラシート・演出ルール・シーン生成テンプレ)はBL Prompt Kit(BOOTH)からダウンロードできます。キャラ設定を次回作でも使い回すなら、キャラノート(β)に保存しておくと引き継ぎが楽です。
CharaNote開発日記
「AIに口調を守らせたい」——この記事で紹介したテンプレートを、もっと直感的に管理できるツールを作っています。
CharaNoteは、キャラ設定シートをAIが読める形式で保存し、どのAIツールにもワンクリックで渡せるキャラ管理アプリです。現在クローズドβに向けて開発中。
進捗や先行アクセスの案内はCharaNote公式で。