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AIで小説を書くための実践ガイド

2026-04-04ChatGPT メモリ機能 小説 設定 活用

ChatGPTメモリ機能で小説の設定を記憶させる3ステップ——毎回コピペはもう終わり

「また一人称が変わってる……全部渡したのに」

新しいチャットを開く。前回の設定をコピーし、貼り付け、送信する。返ってきた文章を読み、眉をひそめる。受けの一人称が「僕」から「俺」に戻っている。設定テキストを検索し、該当箇所をハイライトし、もう一度貼り直す。この作業を毎回やっている人は多い。

ChatGPTのメモリ機能を使えば、この繰り返しから抜け出せる。キャラ設定・世界観・文体ルールをメモリに保存しておけば、新しいチャットを開いても設定が引き継がれる。

ステップ1: メモリに保存すべき設定を整理する

メモリに何でも詰め込むと逆効果になる。ChatGPTのメモリ容量には上限があるため、情報を3カテゴリに分けて優先度をつける。

カテゴリA: キャラ設定(最優先)

  • 名前、年齢、職業
  • 一人称・二人称・語尾(口調の三点セット)
  • 性格の「表と裏」
  • 相手キャラとの関係性

カテゴリB: 世界観

  • 時代設定、場所の固有名詞
  • 作品固有のルール(例: 魔法の制約、組織の階級)

カテゴリC: 文体ルール

  • 視点(一人称/三人称)
  • 地の文の演出方針(感情を説明しない、動作で見せる等)
  • 禁止表現(「と思った」を使わない等)

この3カテゴリのうち、Aは必ずメモリに入れる。BとCは作品の複雑さに応じて取捨する。ファンタジーならBの比重が上がるし、現代BLならAとCだけで十分なことも多い。

設定の粒度が足りずキャラが崩壊する問題については「ChatGPTでBL小説を書くと「キャラ崩壊」する問題、プロンプトの構造で解決できる」で詳しく扱っている。

ステップ2: キャラ設定をメモリに記憶させる

ChatGPTの設定画面から「パーソナライズ」→「メモリ」を開く。ここに直接テキストを入力してもいいが、チャット内で「これを記憶して」と指示する方法が確実で手軽だ。

以下は実際に使えるプロンプト例。BL Prompt Kitのキャラ設定シートをベースに、メモリ保存に最適化した形になっている。

以下のキャラ設定を記憶してください。今後の小説生成で常にこの設定を参照してください。

【攻め: 大槻 陽介(おおつき ようすけ)】
- 32歳、プラントエンジニア
- 一人称「俺」、二人称は小松を「小松」と名字呼び
- 語尾「〜だろ」「〜だな」。断定形が多く、疑問形をほぼ使わない
- 表の顔: 穏やかで人当たりがいい。誰にでも笑顔を見せる
- 裏の顔: 相手の行動を把握していないと不安になる。執着を自覚している
- セリフ例:「ゴミ、持つよ。ついでだから」(何でもない顔で距離を詰める)

【受け: 小松 晶(こまつ あきら)】
- 25歳、アパレル販売員
- 一人称「俺」、二人称は大槻を「大槻さん」
- 語尾「〜っすね」「〜じゃないですか」。敬語混じりのくだけた口調
- 外見: 整った顔立ちだが本人は無自覚。客からの連絡先渡しを断るのが日課
- セリフ例:「あ、大槻さん。今日も遅いっすね」(警戒ゼロの笑顔)

【関係性】同じタワーマンションの住人。深夜のゴミ捨て場でしか顔を合わせない。

この形式のポイントは3つ。一人称・語尾・セリフ例の「口調三点セット」を必ず含めること表と裏の性格を分けて書くこと関係性を一文で定義することだ。

次に、読者自身のキャラで使える空テンプレートを載せる。

以下のキャラ設定を記憶してください。今後の小説生成で常にこの設定を参照してください。

【攻め: {名前}】
- {年齢}歳、{職業}
- 一人称「{一人称}」、二人称は{受けの名前}を「{呼び方}」
- 語尾: {語尾の癖を2〜3個}
- 表の顔: {周囲に見せている態度}
- 裏の顔: {本人だけが知っている内面}
- セリフ例:「{このキャラらしいセリフ}」

【受け: {名前}】
- {年齢}歳、{職業}
- 一人称「{一人称}」、二人称は{攻めの名前}を「{呼び方}」
- 語尾: {語尾の癖を2〜3個}
- 表の顔: {周囲に見せている態度}
- 裏の顔: {本人だけが知っている内面}
- セリフ例:「{このキャラらしいセリフ}」

【関係性】{二人の関係を一文で}

このテンプレートのフルキット(口調キーププロンプト、シーン生成テンプレート、状態管理シートを含む完全版)は BL Prompt Kit(BOOTH) で公開している。

ステップ3: 世界観と文体ルールも覚えさせる

キャラ設定だけでは足りない場面がある。同じキャラでも、文体ルールがなければAIは「悲しかった」「嬉しくなった」と感情を説明文で処理してしまう。

以下のように文体ルールもメモリに追加する。

以下の文体ルールも記憶してください。

【文体ルール】
- 視点: 三人称(大槻視点寄り)
- 感情は説明しない。表情・動作・沈黙で表現する
- 「〜と思った」「〜と感じた」は禁止
- 感情が高ぶるほどセリフを短く、動作を小さくする

これを入れた場合と入れなかった場合の差を見てほしい。

メモリに文体ルールなし(before) 大槻はゴミ袋を結びながら、小松の横顔を見た。整った顔立ちだと思った。深夜にしか会えないことが少し寂しかった。「今日も遅いな」と声をかけると、小松は嬉しそうに笑った。

メモリに文体ルールあり(after) ゴミ袋を結ぶ手が止まる。小松がストッキングの入った紙袋をダストシュートに押し込んでいる。蛍光灯の下で、鎖骨のあたりに影が落ちていた。「……今日も遅いな」声が思ったより低く出た。小松が振り向いて、何でもない顔で笑う。「大槻さんこそ」

変えたのは「文体ルール4行」をメモリに追加しただけ。 感情の説明文が消え、動作と沈黙でシーンが動き始める。脳が「読んでいる」から「見ている」に切り替わる瞬間がある。認知科学ではこれを輸送効果(transportation)と呼ぶ。同じ設定が繰り返し登場し、感情の直接説明がなくなると、読者の脳は物語世界を「既知の場所」として処理し始める。没入が深まるのは、情報量が増えたからではなく、脳が現実と同じ方法で物語を処理し始めたからだ。

設定が途中で薄れてキャラがブレる問題には「AI小説の設定忘れを防ぐ「設定リマインダー」」が効く。メモリ機能と組み合わせると、長編でも一貫性を保ちやすくなる。

メモリの棚卸し: 定期的な整理が必要な理由

メモリは万能ではない。複数の作品を並行して書いていると、キャラAの設定とキャラBの設定が混在し始める。

月に1回、メモリの棚卸しをする。 手順は3つだけ。

  1. ChatGPTの設定画面 →「メモリ」を開く
  2. 現在進行中の作品に関係ない設定を削除する
  3. 残った設定の「関係性の現在地」を最新話に合わせて更新する

特に3番目が見落とされやすい。第1話では「深夜のゴミ捨て場でしか顔を合わせない」だった関係性が、第10話では「互いの部屋を行き来する仲」になっているのに、メモリが初期状態のまま——これはキャラ崩壊の原因になる。物語の進行に合わせてメモリも進める。

キャラ設定を一元管理したい場合は キャラノート(β) のようなツールで設定シートを保存し、必要なときにAIへ渡す運用も選択肢になる。

まとめ

  • ステップ1: 設定を「キャラ・世界観・文体」の3カテゴリに分け、優先度をつける
  • ステップ2: 口調三点セット(一人称・語尾・セリフ例)を含むキャラ設定をメモリに保存する
  • ステップ3: 文体ルールを追加して「説明文」を「描写」に変える

毎回のコピペを捨てて、書くことに集中する環境を作る。テンプレートの完全版(キャラ設定シート・口調キーププロンプト・シーン生成テンプレート・状態管理シートのセット)は BL Prompt Kit(BOOTH) で手に入る。キャラ崩壊の構造的な原因と対策は noteの解説記事 でも公開している。

CharaNote開発日記

「AIに口調を守らせたい」——この記事で紹介したテンプレートを、もっと直感的に管理できるツールを作っています。

CharaNoteは、キャラ設定シートをAIが読める形式で保存し、どのAIツールにもワンクリックで渡せるキャラ管理アプリです。現在クローズドβに向けて開発中。

進捗や先行アクセスの案内はCharaNote公式で。