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2026-03-31AI小説 キャラ崩壊

ChatGPTでBL小説を書くと「キャラ崩壊」する問題、プロンプトの構造で解決できる

ChatGPTでBL小説を書くと「キャラ崩壊」する問題、プロンプトの構造で解決できる

ChatGPTに「深夜の屋上でおにぎりを差し出すシーン」を書かせた。キャラ設定は「外科医の霧島凛、28歳、クールで寡黙」「看護師の瀬川蒼、27歳、穏やかで明るい」だけ。

返ってきたのはこれだった。

「……ありがとう」

小さな声だった。瀬川に聞こえたかどうかもわからないくらいの。でも瀬川は聞こえていたのだろう。隣で、少しだけ嬉しそうに目を細めた。

「いつでも来ますよ、霧島先生のところには」

3つ問題がある。瀬川の口調が「来ますよ」「霧島先生」——敬語。設定では凛の前ではタメ口で「霧島」と呼ぶはずなのに、AIが「穏やか=丁寧な敬語キャラ」に勝手に変換している。「嬉しそうに目を細めた」は感情の説明文。そして「ありがとう」——クールで寡黙なキャラが、こんなに素直に感謝を口にする?

これがAI小説の「キャラ崩壊」。設定を渡しても、AIが勝手に解釈して別人にする。

キャラが崩壊する3つの原因

原因1: 設定の粒度が足りない

「性格:クールだけど本当は優しい」——AIにはこれが曖昧すぎる。

人間なら「クール」から口調や行動パターンを想像できる。AIは、具体的な指示がないと「クールっぽい平均的なキャラ」を生成する。全員同じ口調になる。

必要なのは、一人称・語尾・セリフ例・絶対に使わない言葉まで分解した設定。

たとえば霧島凛なら:

■ 口調ルール(最重要)
- 一人称: 俺
- 二人称: お前(瀬川に対して)
- 語尾の癖: 〜だろ、〜だな(断定。疑問形を避ける)
- 話し方の特徴: 短文で切る。説明しない
- 絶対に使わない言葉: 「可愛い」「好き」「ありがとう」
- セリフ例:
  1. 「……別に。そう思っただけだ」
  2. 「帰るぞ、瀬川。終電なくなる」
  3. 「お前、夜勤明けだろ。寝ろ」

ここまで指定すると、AIは「ありがとう」を言わなくなる。「絶対に使わない言葉」が地味に効く。霧島に「好き」を禁止するだけで、出力の空気が変わる。

原因2: 感情を「説明」させている

AIのデフォルトは「霧島は嬉しかった」。これがAI臭さの正体。

小説で感情を伝えるのは、動作と沈黙の仕事。「嬉しかった」ではなく「二個目のおにぎりに手を伸ばした」。読者が自分で感情を読み取る余地を残す。

これはプロンプトに4行加えるだけで制御できる。

【演出ルール】
- 感情は説明しない。表情・沈黙・動作・セリフだけで表現する
- 「嬉しかった」「悲しかった」のような心情説明は禁止
- 感情が高ぶるほど言葉を少なく、動作を小さくする
- 読者が自分の心の中で感情を「生成」するように設計する

今すぐ使える。次にChatGPTでシーンを書かせるとき、この4行を冒頭に追加してみてほしい。出力が変わる。

原因3: 文脈が途切れる

AIは前の章の内容を覚えていない。シーンを書くたびに「今このキャラはどんな状態か」を伝え直す必要がある。

■ 現在の状態
- 場所: 病院の屋上
- 感情: 手術の失敗を引きずっている。自責。表には出さない
- 直前に起きたこと: 6時間の手術で患者を救えなかった

この「現在の状態」をシーンごとに更新して貼り付ける。面倒に見えるが、フォーマットが決まっていれば30秒で書ける。

before/after: 同じAI、同じシチュエーション、プロンプトだけ変えた結果

設定の構造化 + 演出ルール + 現在の状態。この3つを組み合わせて、もう一度同じシーンを書かせた。

霧島は包みを開く。握りが崩れないように、慎重に持つ。指先はまだ揺れている。

噛む。咀嚼は遅い。飲み込むまでに時間がかかる。

「……お前、夜勤明けだろ。寝ろ」

瀬川は笑った。白い息が短く散る。 「霧島こそ」

返す言葉がなかった。

「……梅か」

「うん。霧島、梅好きでしょ」

違う。好きなのは昆布だ。梅が好きなのはお前だろう。そう言おうとして、やめた。

「ありがとう」の代わりに「寝ろ」。感情説明の代わりに、指先の震え。瀬川は「霧島先生」ではなく「霧島」。

違うのはプロンプトの構造だけ。

「禁止事項」が一番効く理由

テンプレートの中で最も効果が大きいのは禁止事項

AIは放っておくと「いい話」に着地させようとする。「ありがとう」と言わせ、微笑ませ、温もりで終わらせる。

禁止事項で縛ると、AIは着地点を自分で探さなければならなくなる。結果、予定調和ではないシーンが生まれる。

  • 「凛に『ありがとう』を言わせない」→ 代わりに二個目のおにぎりに手を伸ばす
  • 「蒼に手術の失敗について触れさせない」→ 触れないこと自体が蒼の優しさになる
  • 「直接的な愛情表現をさせない」→ 梅のおにぎりの「間違い」で関係性を暗示する

「何を書くか」より「何を書かないか」を指定する方が、AIの出力は面白くなる。

構造化テンプレートの全体像

この記事で紹介した3つの要素——キャラ設定の構造化、演出ルール、現在の状態——は、それぞれ独立したテンプレートとして使える。

| テンプレート | 解決する問題 | 使うタイミング | |---|---|---| | キャラ設定シート | 口調・性格がブレる | キャラ作成時(最初に1回) | | 演出ルール | AI臭い感情説明 | シーンを書くたびに冒頭に追加 | | 状態管理シート | 前のシーンを忘れる | シーン終了ごとに更新 |

これに加えて、口調を長い会話でも維持する「口調キーププロンプト」と、長編のプロット破綻を防ぐ「長編アウトラインシート」を合わせた5本セットが、フルキットの構成。

フルキット(テンプレート5本 + 記入例3種 + PDF)はBL Prompt Kit(BOOTH)からダウンロードできる。BL版(外科医×看護師)、夢小説版(アイドル×マネージャー)、汎用版(傭兵×学者)の3ジャンル分の記入例付き。ChatGPTとClaude対応。

まとめ

  • AIのキャラ崩壊は「設定の粒度不足」「感情説明」「文脈切れ」の3つが原因
  • 口調ルール(一人称・語尾・セリフ例・禁止語)の構造化が最も効果が大きい
  • 「何を書かないか」を指定する禁止事項が、AIの出力を予定調和から解放する