AI BL台本の書き方——プロンプト3ステップで「声だけの物語」を書かせる
「……だからさ、台本書いてって言ったのに、なんでナレーション入ってんだよ」
ChatGPTの出力画面をスクロールする。「彼は切なさを感じながら、そっと目を逸らした」——これ、声優に何を読ませるつもりなのか。台本には地の文がない。感情を説明する文章が存在しない。あるのはセリフと、ト書きと、効果音だけ。AIにそれを理解させるには、構造から指定する必要がある。
台本と小説は構造が違う——フォーマット指定が最初の一手
AIが台本を小説にしてしまう原因は単純で、「台本」という単語だけでは出力フォーマットが確定しない。
小説は「地の文+セリフ」で構成される。台本は「キャラ名+セリフ+ト書き+SE(効果音)」で構成される。この差をプロンプトで明示する。
【出力フォーマット: 台本形式】
- 地の文(ナレーション)は書かない
- 出力はすべて以下のいずれかで構成する:
1. キャラ名「セリフ」
2. (ト書き: 動作・間・効果音の指示)
3. SE: 効果音の説明
- 「彼は〜と感じた」「〜な気持ちだった」等の心情描写は禁止
- 感情はセリフの言い回し・間・声のトーン指示だけで表現する
これだけで、AIの出力から地の文が消える。「声に出して読める形」に変わる。
セリフだけで関係性を伝える——キャラの「声」を設計する
台本の最大の難所は、地の文がないこと。小説なら「桐ヶ谷は動揺を隠すように背を向けた」と書ける。台本ではそれができない。セリフの文体と、ト書きの「間」だけで、キャラの感情と2人の関係性を出さなければならない。
AIにそれをやらせるには、キャラ設定を「声」に特化させる。
ここでは、バンドのボーカルとマネージャーの2人で実例を作る。
【キャラA: 桐ヶ谷怜(攻め)——バンドのボーカル、28歳】
- 一人称: 俺
- 語尾: 「〜だろ」「〜だけど」(断定しかけて、最後に逃げる)
- セリフの長さ: 短い。1ターン1文。沈黙が多い
- 声のトーン: 低め。感情が動くと、さらに低くなる
- 絶対に言わない言葉: 「ありがとう」「助かった」
セリフ例:
1.「……ああ」(肯定。だが、それ以上の言葉が出ない)
2.「別に。やりたくてやっただけだろ」(感謝されると距離を取る)
3.「……水瀬、お前さ」(核心に触れかけて、やめる)
【キャラB: 水瀬凪(受け)——バンドのマネージャー、25歳】
- 一人称: 俺
- 語尾: 「〜っすよ」「〜じゃないですか」(敬語崩れ。距離を測りかねている)
- セリフの長さ: 長い。沈黙を埋めるように喋る
- 声のトーン: 明るめ。動揺すると早口になる
- 絶対に言わない言葉: 「好きです」「特別」
セリフ例:
1.「お疲れっす。水、置いときますね」(世話焼き。自然体を装う)
2.「いやそれ、俺の仕事なんで。気ぃ遣ってるわけじゃ——」(言い訳が長い)
3.「……桐ヶ谷さん、今日のMC、よかったっすよ」(褒め方が不器用)
この設定をプロンプトに入れると、AIはセリフの文体だけで2人の距離感を出力するようになる。
キャラ設定なし(before):
桐ヶ谷「お疲れ様。今日のライブ、良かったよ」 水瀬「ありがとうございます。桐ヶ谷さんのMC、素敵でした」 桐ヶ谷「水瀬くんのおかげだよ。いつもサポートしてくれて」 水瀬「そんな、僕なんて何もしてません。桐ヶ谷さんの歌があってこそです」
キャラ設定あり(after):
(ト書き: ペットボトルのキャップを開ける音。飲まない。) 桐ヶ谷「…………」 水瀬「あ、お疲れっす。セトリ、最後に2曲入れ替えたの正解でしたね。客席の空気が一気に——」 桐ヶ谷「水瀬」 水瀬「……はい」 桐ヶ谷「今日の、あれ」 水瀬「あれ、って」 桐ヶ谷「アンコールの前。袖で何か言いかけてた」 (ト書き: 間。水瀬、答えるまでに3秒かかる。) 水瀬「……気のせいっすよ。声出しのタイミング確認しただけで」 桐ヶ谷「……そう」
▶ 変えたのは"キャラごとの口調ルール・セリフの長さ・禁止語"を指定しただけ。同じ「ライブ後の楽屋」でも、セリフの温度がまるで違う。
このテンプレートの攻め受け全パターンはBL Prompt Kit(BOOTH)に収録されている。
ト書きで「音」を設計する——台本にしかできない演出
台本では、ト書きとSE(効果音)が地の文の代わりに空気を作る。小説の「胸が詰まった」は、台本では「3秒の沈黙」になる。AIにこの変換をやらせるプロンプトがある。
【ト書きルール】
- ト書きは()で囲む
- 動作指示は最小限。「間」「沈黙」「〜する音」の3種で構成する
- 具体的な感情を書かない。「怒りを込めて」ではなく「声量が落ちる」
- SE(効果音)は場面の空気を変えるタイミングで挿入する
ト書きで使える演出:
1. 間(ま): 感情を飲み込んだことの暗示
2. 音の変化: ドアの開閉、足音の有無、グラスを置く音
3. 距離の変化: 「声が近づく」「声が遠ざかる」
攻め受けのセリフの書き分けについてはAI BL攻め受けプロンプトテンプレで、口調ルールの構造から解説している。台本でもキャラ設定の基本構造は同じで、「セリフ例3つ+禁止語」がそのまま使える。
ト書きで関係性を暗示する実例:
SE: 楽屋のドアが閉まる音。外の歓声が遠くなる。 (ト書き: 沈黙。5秒。) 桐ヶ谷「…………帰るぞ」 水瀬「あ、車回してきます——」 桐ヶ谷「いい。歩く」 (ト書き: 足音が2人分。テンポが揃うまでに数歩かかる。) 水瀬「……今日のライブ、やっぱ桐ヶ谷さんの声、マイクなしでも届くんすよね」 桐ヶ谷「…………」 水瀬「……すんません、変なこと言いました」 桐ヶ谷「別に。変じゃない」 (ト書き: 足音が、少しだけ近づく。)
「足音が揃うまでに数歩かかる」——この一行で、2人の距離が縮まっていく過程が聞こえる。地の文で「桐ヶ谷は水瀬との距離が近づいていることに気づいた」と書くより、はるかに生々しい。
シーン転換と余韻——台本の「終わり方」を指定する
台本は地の文で心情をまとめられない。最後のセリフか、最後のSEで終わる。AIに「余韻のある終わり方」をさせるには、閉じ方のルールが要る。
【シーン終了の指示】
- ラストはSEまたはト書きで終わる。セリフで終わらない
- 感情のピークではなく「ピーク直後の静けさ」で閉じる
- 最後のSEは、聴き手の余韻を作る環境音にする
実例:
桐ヶ谷「……水瀬」 水瀬「はい」 桐ヶ谷「明日からのツアー、ちゃんと寝ろよ」 水瀬「……それ、桐ヶ谷さんに言われたくないんですけど」 (ト書き: 小さく笑う声。どちらのものかは、わからない。) SE: 夜の街の遠い音。信号が変わる電子音。足音が、ゆっくり遠ざかっていく。
「どちらの笑い声かわからない」——この曖昧さが、聴き手の中で感情を生成する。台本は読者ではなく「聴き手」に向けた形式だからこそ、「聞こえる情報だけで語る」ことが武器になる。
BL小説の書き方の基本を押さえたい場合は、ChatGPTでBL小説を書く方法で構造の全体像を確認してから台本に応用すると、設計の解像度が上がる。
まとめ
AIにBL台本を書かせるカギは3つ。
- フォーマット指定: 「台本形式」を明示し、地の文を禁止する
- 声の設計: キャラごとの口調ルール・セリフ長・禁止語で、セリフだけで関係性を出す
- ト書きの演出: 「間」「音」「距離」の3要素で、感情を声と音に変換する
台本は「声に出して読まれる」前提の形式。だからこそ、地の文で説明できない制約が逆に武器になる。セリフと音だけで関係性が伝わったとき、小説とは別種の生々しさが立ち上がる。
キャラ設定シートから攻め受けの口調テンプレートまで、台本にもそのまま応用できるプロンプトのフルキットはBL Prompt Kit(BOOTH)に収録されている。