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2026-03-31AI小説 AI臭い 直し方

AI小説の「AI臭い」を直す3つの方法——感情説明をやめるだけで文章が変わる

AI小説の「AI臭い」を直す3つの方法——感情説明をやめるだけで文章が変わる

ChatGPTに小説のワンシーンを書かせた。設定は「手術に失敗した外科医が屋上で座り込んでいる。同僚がおにぎりを持ってくる」。

返ってきたのがこれだった。

霧島は深い悲しみに包まれていた。手術の失敗が頭から離れない。そんなとき、瀬川がおにぎりを持って屋上にやってきた。「大丈夫? 無理しないでね」と優しく声をかけた。霧島は嬉しかった。瀬川の優しさに触れて、心が少し軽くなった。

読めば意味はわかる。だが、何も残らない。「悲しみに包まれていた」「嬉しかった」「心が軽くなった」——全部、感情の説明文。読者が自分の中で感情を生み出す余白がどこにもない。

この「AI臭さ」には構造的な原因が3つある。原因がわかれば、プロンプトの書き方で直せる。

AI小説が「AI臭い」と感じる3つの原因

AI臭さの正体は、漠然とした「文体の問題」ではない。分解すると以下の3つに行き着く。

1. 感情を全部説明してしまう

「嬉しかった」「悲しかった」「胸が痛んだ」。AIは感情を直接書く。人間の小説は違う——感情を動作や沈黙で「暗示」する。説明された感情は読者の心に届かない。

2. 文章のリズムが均一になる

「しかし」「さらに」「また」が等間隔で出現する。文の長さも揃っている。人間が書く文章には、短い文と長い文のリズムの揺れがある。

3. 展開が「いい話」に着地する

AIは対立を早く解消したがる。怒っているキャラがすぐ許す。すれ違いが1段落で解決する。読者が感情移入する前に、物語が勝手にまとまってしまう。

この3つを1つずつ潰していく。

直し方1: 「感情説明」を「動作描写」に変換する

AI臭さの最大の原因は、感情の直接説明。これを潰すだけで文章の質が劇的に変わる。

やり方はシンプルで、プロンプトに演出ルールを追加する。

【演出ルール】
- 感情は説明しない。表情・沈黙・動作・セリフだけで表現する
- 「嬉しかった」「悲しかった」のような心情説明は禁止
- 感情が高ぶるほど言葉を少なく、動作を小さくする

たった3行。これをプロンプトに加えるだけで、出力が変わる。

冒頭の「おにぎりのシーン」で比較してみる。

演出ルールなし(before) 霧島は深い悲しみに包まれていた。瀬川がおにぎりを持ってきてくれて、嬉しかった。「ありがとう」と素直に言った。

演出ルールあり(after) おにぎりに手を伸ばす。包みを剥がす指先が、自分でもわかるくらい震えていた。 瀬川は見ていた。見ていて、何も言わなかった。 「……梅か」 「うん。霧島、梅好きでしょ」 違う。好きなのは昆布だ。そう言おうとして、やめた。

beforeは「嬉しかった」と書いている。afterは一度も「嬉しい」と書いていない。だが、afterのほうが感情が伝わる。震える指先、間違ったおにぎりの具、言おうとしてやめた沈黙——読者がそこから感情を読み取る。

なぜこれが効くのか。 AIは「禁止」の指示に強い。「感情を説明しない」と明示すると、代わりの表現手段(動作・小道具・沈黙)を探しに行く。演出ルールは「何を書くか」ではなく「何を書かないか」を指定するプロンプトであり、AIの表現の幅を逆に広げる。

このテンプレートはBL Prompt Kitの「シーン生成プロンプト」の一部として公開している。フルキットにはキャラ設定シートや口調キーププロンプトも含まれていて、演出ルールとの組み合わせでさらに精度が上がる。

直し方2: 「演出ノート」でAIに考えさせてから書かせる

演出ルールを入れても、まだAI臭さが残ることがある。原因は、AIが「いきなり本文を書き始める」こと。人間の小説家は、書く前にシーンの演出設計を頭の中で行う。AIにも同じプロセスを踏ませる。

これをDirector-Actor方式と呼んでいる。AIに「演出家」としてシーンを設計させてから、「俳優」としてキャラを演じさせる。

プロンプトの構造はこうなる。

【出力フォーマット】
以下の2パートで必ず出力してください。

パート1「演出ノート」: シーンの演出設計を書いてください。
- 各キャラのこの場面での心情
- 感情の変化をどの動作・描写で表現するか(具体的に)
- 禁止事項に抵触しないための注意点

パート2「本文」: 演出ノートを踏まえたシーン本文

演出ノートを挟むことで、AIは「このキャラは今何を感じていて、それをどう表現するか」を言語化してから書き始める。結果、感情の流れが一貫し、表現の解像度が上がる。

たとえば演出ノートにはこんなことが書かれる。

霧島の心情設計: 自責が極まっているが、設定上「感情を言語化しない」キャラのため、疲弊は動作(手の震え、反応の遅さ)でしか外に出ない。瀬川の存在に安堵を感じるが、それを認めることは「他人に頼る」ことになるため拒否する。

ここまで言語化してから本文を書くので、「悲しかった」のような安易な感情説明が出にくくなる。

AIの口調が途中で崩れてしまう問題も、このアプローチの延長で解決できる。演出ノートにキャラの口調ルール(一人称、語尾、絶対に使わない言葉)を再確認させるフェーズを入れれば、口調の一貫性も保たれる。口調崩壊の詳しい対策は「AI小説の口調が崩れる3つの原因——構造化テンプレートで「声」を固定する方法」で解説している。

直し方3: 「禁止事項」でAIの予定調和を壊す

AIは放っておくと「いい話」に着地させる。怒りのシーンなのに3行で仲直り。すれ違いなのに次の段落でお互いの気持ちが通じる。

これを防ぐのが禁止事項の指定。

【禁止事項】
- 「ありがとう」を言わせない
- ハッピーエンドに着地させない
- 直接的な愛情表現をさせない
- 手術の失敗について触れさせない

禁止事項はシーンの「制約」であり、制約があるからこそ表現に工夫が生まれる。「ありがとう」が言えないから、代わりにおにぎりの二個目に手を伸ばす。感謝を言葉にできないキャラの不器用さが、動作ににじみ出る。

AIに「書くな」と指示すると、その周辺の表現を探索する。結果として、人間が書いたような「味のある」文章が出力される。

制約の威力は、キャラの設定と組み合わせたときにさらに増す。「感情を言語化しないキャラ」に「ありがとうを言わせない」制約を加えると、AIはそのキャラの性格に合った代替表現を必死に探す。キャラ設定の構造化については「ChatGPTでBL小説を書くと「キャラ崩壊」する問題、プロンプトの構造で解決できる」で詳しく扱っている。

実践: 3つの方法を組み合わせた出力例

演出ルール + 演出ノート + 禁止事項。3つを組み合わせて、同じ「おにぎりのシーン」を書かせた結果の一部がこれ。

屋上の鉄扉が軋んだ。

霧島は振り向かなかった。コンクリートの縁に腰を下ろしたまま、白衣のポケットに突っ込んだ手を動かさない。足音でわかる。スニーカーの柔らかい音。

瀬川が何も言わずに隣に座る。膝の上に、コンビニの袋。中身を出す気配。おにぎり。ふたつ。

「……お前、夜勤明けだろ。寝ろ」

瀬川は笑った。白い息が短く散る。「霧島こそ」

返す言葉がなかった。

二個目を手に取った。梅だった。両方、梅だった。

瀬川の白い息が、隣で小さく上がっては消える。等間隔で。 生きている人間の呼吸だ、と霧島は思った。

それだけのことが、今は少しだけ、重かった。

「嬉しかった」「悲しかった」は一度も出てこない。「ありがとう」も出てこない。だが、二個目のおにぎりに手を伸ばすことが感謝であり、白い息の描写が「隣にいてくれること」の重みを伝えている。

冒頭のbefore(「深い悲しみに包まれていた。嬉しかった。心が軽くなった。」)と読み比べてみてほしい。同じAIが、プロンプトの構造を変えるだけで、ここまで変わる。

まとめ

AI小説の「AI臭さ」は文体の問題ではなく、プロンプトの構造の問題。感情説明の禁止(演出ルール)書く前に考えさせる(演出ノート)制約で表現を引き出す(禁止事項)——この3つを組み合わせるだけで、AIの出力は読者の感情を動かす文章に変わる。

この記事で紹介した演出ルール・演出ノート・禁止事項のテンプレートは、BL Prompt Kit(BOOTH)にフルセットで収録している。キャラ設定シートや口調キーププロンプトとの組み合わせで、AI小説の品質をさらに引き上げられる。無料ダウンロードできるので、まずは1シーン書いてみてほしい。