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2026-04-01AI小説 プロンプト テンプレート

AI小説のプロンプトテンプレート——コピペだけで終わらない「構造」の作り方

AI小説のプロンプトテンプレート——コピペだけで終わらない「構造」の作り方

ChatGPTに「ジャズピアニストと古書修復師の物語を書いて」と頼んだ。返ってきた文章の1行目、「沢村航はジャズピアニストで、音楽を愛する青年だった」。設定を地の文で説明しただけの出力。キャラの声も場面の空気もない。

テンプレートは「完成品」ではなく「設計図」として使う必要がある。この記事では、AI小説の出力を実際に変えるプロンプトテンプレートを3種類、空テンプレート・記入例・AI出力をセットで公開する。

AI小説のプロンプトテンプレートが「コピペ」では機能しない理由

ネット上で見かけるAI小説のテンプレートの多くは、こんな形をしている。

ジャンル: 現代ドラマ
雰囲気: 切ない
主人公: ジャズピアニスト、30代男性、クール
テーマ: 再生

この情報だけでは、AIは「クールっぽい平均値」を出力する。「クール」の解釈はターンごとに変わり、3行目で「俺」だった一人称が10行目で「僕」になる。

原因は、指定が「雰囲気」で止まっていること。AIにとって「クール」は曖昧な形容詞でしかない。「クール」を一人称・語尾・セリフ例・禁止語の4つに分解して、初めてテンプレートとして機能する。

テンプレート1: キャラ設定——「性格」を6項目に分解する

キャラの口調と内面を6項目で定義するテンプレート。「性格: クール」を、AIが解釈のブレなく処理できる粒度まで落とし込む。

■ キャラ設定シート

【基本情報】
- 名前:
- 年齢:
- 職業:

【口調ルール(最重要)】
- 一人称:
- 二人称:
- 語尾の癖:
- 話し方の特徴:
- 絶対に使わない言葉:
- セリフ例(3つ):
  1. (平常時)
  2. (感情が動いたとき)
  3. (相手に対して)

【内面】
- 矛盾: (言動と本心のズレ)
- 最も恐れていること:

このテンプレートはBL Prompt Kitのキャラ設定シートの構造を基にしています

このテンプレートを、ジャズピアニストのキャラで埋めたものが以下になる。

■ キャラ設定シート — 沢村 航

【基本情報】
- 名前: 沢村 航(さわむら わたる)
- 年齢: 32歳
- 職業: ジャズピアニスト。左手小指と薬指に後遺症あり

【口調ルール】
- 一人称: 俺
- 二人称: あんた(一ノ瀬)、あなた(初対面)
- 語尾の癖: 「〜だろ」「〜だよ」。断定が多い。音楽の話だけ語尾が柔らかくなる
- 話し方の特徴: 短文。間が多い。相手の言葉を繰り返す癖がある
- 絶対に使わない言葉: 「弾けない」(自分の手について認めない)。「ありがとう」の代わりに行動で返す
- セリフ例:
  1. 「……ああ。聞いてる」(平常時。相槌が最小限)
  2. 「触るな。——いや、……悪い」(手に触れられたとき。反射で拒否して後悔する)
  3. 「あんた、飯食ったのか。ここ暖房壊れてるだろ」(一ノ瀬に対して。世話を焼くが理由を言わない)

【内面】
- 矛盾: 「ピアノはもういい」と言いながら、毎晩スタジオの前を通る
- 最も恐れていること: もう一度弾きたいと認めてしまうこと
■ キャラ設定シート — 一ノ瀬 律

【基本情報】
- 名前: 一ノ瀬 律(いちのせ りつ)
- 年齢: 28歳
- 職業: 古書修復師。古書店の2階に工房を持つ

【口調ルール】
- 一人称: 僕
- 二人称: 沢村さん
- 語尾の癖: 「〜ですね」「〜ですよ」。穏やか。修復の話では断定形になる
- 話し方の特徴: 説明が丁寧。感情が動くと言葉が短くなる
- 絶対に使わない言葉: 「残念ですね」等の同情。相手の痛みを言葉にしない
- セリフ例:
  1. 「この紙質だと、1890年代のウィーンですね。製紙工場が特定できます」(仕事モード)
  2. 「……それは、僕が判断することじゃないです」(踏み込みすぎたとき。引く)
  3. 「沢村さん、ここ。最後のページ」(沢村に対して。核心を指し示すが説明しない)

【内面】
- 矛盾: 依頼品に感情移入しないのが信条だが、沢村の楽譜のコーヒー染みを消せなかった
- 最も恐れていること: 自分の判断で、誰かの大切なものを壊すこと

ポイントは**「絶対に使わない言葉」と「矛盾」**の2項目。

沢村に「弾けない」を禁止すると、AIは直接表現を避けて「鍵盤に触れかけて、止める」のような動作描写を生み出す。「矛盾」はキャラを動かすエンジンになる。「ピアノはもういい」と言いながらスタジオの前を通る——このズレをAIに認識させると、セリフと行動の間に奥行きが生まれる。

キャラ設定の「書きたいシーンから逆算する」方法はAI小説のキャラクターの作り方で解説している。キャラ設定が増えてきたら、キャラノート(β)のようなツールで一元管理すると、プロンプトへの貼り付けが楽になる。

テンプレート2: シーン生成——「いい感じに書いて」を6項目に分解する

キャラ設定ができたら、次はシーンを書かせる。「切ないシーンを書いて」ではAIの平均値が出てくるだけ。以下のテンプレートで、AIに「監督の指示」として演出設計を伝える。

■ シーン生成テンプレート

【演出ルール】
- 感情は説明しない。表情・沈黙・動作・セリフだけで表現する
- 「嬉しかった」「悲しかった」のような心情説明は禁止
- 感情が高ぶるほど言葉を少なく、動作を小さくする

【シーンのゴール】(1文で)
【感情の方向】(各キャラの始点 → 終点)
【場面設定】(場所・時間・五感で拾える情報)
【キーワード】(象徴する小道具・動作。3つ以内)
【禁止事項】(このシーンでさせないこと。3つ以内)

沢村と一ノ瀬のシーンで埋めてみる。場面は「修復が完了した楽譜を引き渡す夜」。

【演出ルール】
- 感情は説明しない。表情・沈黙・動作・セリフだけで表現する
- 「嬉しかった」「悲しかった」のような心情説明は禁止
- 感情が高ぶるほど言葉を少なく、動作を小さくする

【シーンのゴール】
沢村が、一ノ瀬がコーヒー染みを残した意味に気づく

【感情の方向】
- 沢村: 無関心を装う → 動揺 → 言葉にならない感謝
- 一ノ瀬: 平静 → 沢村の反応で自分の判断が正しかったと確信する

【場面設定】
古書店2階の修復工房。夜11時。作業用デスクライトだけが点いている。古い紙とインクの匂い。窓の外に雨の音

【キーワード】
・コーヒー染み ・最後のページ ・左手の指

【禁止事項】
・沢村に「ありがとう」を言わせない
・一ノ瀬に修復の判断を説明させない
・2人を直接目を合わせさせない

このテンプレートとキャラ設定をセットでAIに渡すと、テンプレートなしの出力とは別物になる。

テンプレートなし 沢村は修復された楽譜を手に取り、驚いた。「すごい、完璧だ」と感嘆の声を上げた。最後のページにコーヒーの染みが残っていることに気づき、一ノ瀬を見た。「これ、わざと残したのか?」一ノ瀬は穏やかに微笑んだ。「大切な思い出だと思ったので」沢村は胸が熱くなった。

テンプレートあり 沢村はページをめくった。静かに。修復工房の作業灯が、紙の上に白い光を落としている。

1ページ目。製本の糊が新しい。2ページ目。虫食いが消えている。3ページ——

指が止まった。左手の、動かない薬指が、ページの端を押さえている。

最後のページ。右下に、茶色い染みが残っていた。

「……これ」

一ノ瀬はデスクの向こう側で、次の依頼品の綴じ糸を選んでいた。手を止めなかった。

「最後のページです」

沢村は知っている。この染みを。先生がスタジオで楽譜を広げたまま、コーヒーをこぼした朝のことを。怒るかと思ったら、先生は笑っていた。「これで俺のだってわかるだろ」。

消せたはずだ。他の染みは全部消してある。最後のページだけ、残した。

一ノ瀬は綴じ糸を選び続けている。沢村の方を見ない。

「……あんた」

声が出なかった。左手が楽譜を握っている。動かない指で、染みの上を押さえている。

雨の音だけが、工房に落ちていた。

「ありがとう」を禁止した結果、沢村は声が出なくなり、左手で楽譜を握る動作で感情を表現している。「判断を説明させない」を禁止した結果、一ノ瀬は綴じ糸を選び続ける動作で平静を装い、読者が「なぜ残したのか」を自分で読み取る余白が生まれた。

「何を書かないか」を指定することが、AIの表現力を引き出す。 この仕組みの詳しい解説はAI小説の「AI臭い」を直す方法にまとめている。

テンプレート3: 状態管理——長編で「前の章の記憶」をつなぐ

短編はテンプレート1と2で書ける。長編では、もう一つの問題が出る。AIが前の章の出来事を忘れる。

第3章で「沢村はコーヒーを飲まなくなった」と書いたのに、第7章で「コーヒーを飲みながら」と出力される。原因は、AIの文脈ウィンドウに入りきらない情報が消えること。

解決策が状態管理テンプレート。章が終わるたびに「今の状態」を更新し、次の章のプロンプト先頭に貼る。 AIの記憶を人間が手動で管理する仕組み。

■ 状態管理シート — 第{X}章終了時点

【キャラクターの現在地】
- {キャラA}: 場所 / 感情 / この章で知ったこと / 所持品の変化
- {キャラB}: 場所 / 感情 / この章で知ったこと / 所持品の変化

【関係性の現在地】
- 2人の距離感: {前章からの変化}
- A → B: {今の認識}
- B → A: {今の認識}

【伏線の管理】
- {伏線1}: 張った / 進行中 / 回収済み
- {伏線2}: 張った / 進行中 / 回収済み

【直前の要約(3行以内)】

【次のシーンへの引き継ぎ】

第3章終了時点の記入例。

■ 状態管理シート — 第3章終了時点

【キャラクターの現在地】
- 沢村: 自宅。楽譜を鍵盤の上に置いたまま触れていない。コーヒーを淹れようとして、やめた
- 一ノ瀬: 工房。次の依頼品に取りかかっている。沢村の反応を思い出しているが、仕事に集中しようとしている

【関係性の現在地】
- 距離感: 「依頼人と修復師」から一歩踏み込んだ。双方とも名前をつけていない
- 沢村 → 一ノ瀬: 「この人は、俺の楽譜を理解した」(信頼。それ以上の言葉がない)
- 一ノ瀬 → 沢村: 「沢村さんの左手が楽譜を押さえていた」(あの動作が離れない)

【伏線の管理】
- コーヒー染み: 回収済み(第3章で沢村が気づいた)
- 沢村がコーヒーを飲まなくなった: 張った(先生を思い出すため)
- 一ノ瀬が沢村に工房の合鍵を渡した: 進行中(理由は言っていない)

【直前の要約】
沢村が修復済み楽譜を受け取り、最後のページのコーヒー染みに気づいた。一ノ瀬の判断の意味を理解したが、言葉にできなかった。

【次のシーンへの引き継ぎ】
- 沢村がコーヒーをやめた理由を匂わせる
- 合鍵の伏線を進展させる

このシートを次の章のプロンプト先頭に貼ると、AIは「沢村はコーヒーを飲まなくなった」ことを認識して矛盾のない出力を返す。伏線の「張った/回収済み」を明記することで、AIが勝手に伏線を回収してしまう問題も防げる。

口調を長い会話で維持する方法はAI小説の口調が崩れる3つの原因で、状態管理テンプレートとの組み合わせ方を解説している。

まとめ

  • テンプレート1(キャラ設定): 「クール」を一人称・語尾・セリフ例・禁止語に分解する。曖昧さを排除するほどAIの出力が安定する
  • テンプレート2(シーン生成): 演出ルール・ゴール・禁止事項の3つをセットで指定する。「何を書かないか」がAIの表現力を引き出す
  • テンプレート3(状態管理): 章ごとに「現在地」を更新して貼り付ける。AIの記憶限界を人間が補う

3つのテンプレートは、単体でも使えるが、組み合わせて使うと長編でもキャラと展開が破綻しなくなる。この記事のテンプレートはBL Prompt Kitの構造がベースになっている。キャラ設定シート・シーン生成プロンプト・状態管理シートのフルキットに加え、BL・夢小説・汎用の3ジャンルの記入例が付属。BL Prompt Kit(BOOTH)からダウンロードできる。