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2026-04-02Claude 小説 長文 途切れる 対策

Claude小説が長文で途切れる原因と対策——「まとめに入る」を防ぐプロンプト設計

Claude小説が長文で途切れる原因と対策——「まとめに入る」を防ぐプロンプト設計

「……あれ、なんで急にまとめてんの」

クライマックスに差しかかった3,000字目。主人公が古書の糊を剥がす場面のはずが、Claudeの出力は「こうして二人は、互いの距離を少しずつ縮めていった——」で終わっていた。画面をスクロールして冒頭を確認する。一人称が「俺」から「私」に変わっている。「続きを書いて」と送って再生成する。3,000字かけた緊張感が、たった1行の要約で蒸発した。

ChatGPTとは壊れ方が違います。ChatGPTは出力トークンの壁にぶつかって物理的に途切れる。Claudeは途切れるのではなく、途中で「きれいに終わらせよう」として失敗する

Claudeの長文が途切れるのはChatGPTとは理由が違う

Claudeのコンテキストウィンドウは200kトークン。入力できる量はChatGPTより余裕があります。それでも長編小説を書かせると途中で崩れるのは、原因が「物理的な制限」ではないからです。

原因1: 「まとめに入る」性質

Claudeには「仕事をきちんと完了させたい」という強い傾向があります。長い出力の途中で「もうすぐ出力上限だ」と判断すると、残りの文字数で話を畳もうとする。クライマックス手前で「二人は互いの気持ちを確かめ合い——」と急にダイジェスト化するのはこのパターンです。

ChatGPTなら同じ場面で出力が途中で切れて終わります。不親切ですが、書いた分は破綻していない。Claudeは「途切れさせまい」として、かえって破綻します。

原因2: コンテキストの「遠近感」

200kトークンを均等に参照しているわけではありません。最近のやりとりほど参照精度が高く、20ターン前の設定は「ぼやけて」見えている。長いチャットの途中で口調が変わるのは、キャラ設定が「遠くなった」からです。

ChatGPTで小説が途中で途切れる3つの原因と対策で解説した「出力トークン上限」「入力過多」の問題はClaudeにも共通しますが、対策の設計を変える必要があります。

対策1: 「視点アンカー」で1シーンの出力を安定させる

「まとめに入る」問題は、出力の終了条件が曖昧なときに起きます。「このシーンを書いて」だけでは、Claudeは自分で区切りを判断する。その判断が「きれいに終わらせよう」に引っ張られます。

解決策は視点アンカー——誰の目で、何が見えたら終わるか、を3行で指定するプロンプトです。

古書修復師の甲斐涼(32歳)と翻訳者の柊圭吾(27歳)を例に、完成形を示します。

以下のシーンを書いてください。

【視点アンカー】
■ 視点: 甲斐(三人称・甲斐寄り)
■ 開始: 甲斐が修復台の上で18世紀の和綴じ本の糊を剥がしている
■ 終了: 柊が工房の扉を閉める音を、甲斐が背中で聞く
※「その後」「こうして」で始まる要約文は書かないこと
※ このシーンが終わったら出力を止めること

【キャラ設定】
甲斐涼(32歳・古書修復師):
- 一人称: 俺。口調: ぶっきらぼうだが正確。語尾: 〜だ、〜だな
- 手元の作業中は話しかけられても顔を上げない
- 感情が動くと手が止まる(本人は気づいていない)

柊圭吾(27歳・翻訳者):
- 一人称: 僕。口調: 穏やかだが引かない。語尾: 〜ですね、〜でしょう
- 人の手元をじっと見る癖がある

【演出ルール】
- 感情は説明しない。動作・沈黙・セリフだけで表現する
- 心情を直接書く表現(「胸が高鳴った」等)は禁止
- 字数: 800〜1200字

ポイントは終了条件を「動作」で指定すること。「いい感じのところで終わって」ではなく「柊が扉を閉める音を甲斐が聞く」と具体的な動作で区切ります。Claudeは要約に逃げられなくなり、その動作まで具体的なシーンとして書ききります。

次に、自分のキャラで使える空テンプレートです。

以下のシーンを書いてください。

【視点アンカー】
■ 視点: {視点キャラ名}({一人称 or 三人称・誰寄り})
■ 開始: {視点キャラの最初の動作を1文で}
■ 終了: {シーンの最後の動作を1文で}
※「その後」「こうして」で始まる要約文は書かないこと
※ このシーンが終わったら出力を止めること

【キャラ設定】
{キャラ名A}({年齢}・{職業}):
- 一人称: {一人称}。口調: {特徴}。語尾: {語尾}
- {行動の癖を1つ}
- {感情が動いたときの仕草を1つ}

{キャラ名B}({年齢}・{職業}):
- 一人称: {一人称}。口調: {特徴}。語尾: {語尾}
- {行動の癖を1つ}

【演出ルール】
- 感情は説明しない。動作・沈黙・セリフだけで表現する
- 心情を直接書く表現は禁止
- 字数: {800〜1200字}

{視点キャラ名} {開始動作} {終了動作} の3つを埋めるだけで、Claudeの「まとめ逃げ」を封じられます。この視点アンカーに加え、長編アウトライン・口調キーププロンプト・状態管理カードの全パターンはBL Prompt Kit(BOOTH)に収録しています。

対策2: 「出力区切りカード」でシーンをつなぐ

1シーンが安定しても、シーンを繋げると次の壁にぶつかります。前のシーンの内容をClaudeが忘れる。

対策は、各シーン終了後に「出力区切りカード」を作り、次のプロンプトに渡すことです。

カードなし(before):

甲斐は修復台に向かっていた。柊が工房を訪れた。「お邪魔します」と柊は言った。甲斐は「どうぞ」と答えた。穏やかな時間が流れた。

前のシーンで口論になったはずが、初対面のような会話に戻っています。

カードあり(after):

柊の足音が廊下から聞こえた。甲斐は和綴じ本に目を落としたまま、糊刷毛を持つ手の力が変わらないよう意識した。扉が開く。

「……昨日の資料、置いていきます」

柊の声には、いつもの穏やかさの下に硬いものが混じっていた。甲斐は糊刷毛を置かなかった。置いたら、振り返ってしまう。

▶ 変えたのは"シーンの冒頭に「前回の最終状態」を3行で渡した"だけ。前のシーンの緊張感がそのまま引き継がれています。

出力区切りカードのフォーマットです。

【出力区切りカード — シーン{N}終了時点】

■ {キャラ名A}
- 最後の動作: {1文}
- 感情の方向: {動作で表す。例: 糊刷毛を強く握っている}
- 次のシーンで絶対にしないこと: {1つ}

■ {キャラ名B}
- 最後の動作: {1文}
- 感情の方向: {動作で表す}
- 次のシーンで絶対にしないこと: {1つ}

■ 未回収の要素
- {伏線や小道具}: {状態を1文で}

なぜ「視点の固定」で途切れに強くなるのか

映画撮影に「フィックスショット」という手法があります。カメラを動かさず、フレームの中で人物が出入りする。小津安二郎が多用した撮り方です。

小説のプロンプトでも同じ効果が働きます。視点を1キャラに固定すると、AIが処理すべき「状態」が半分になる。

視点が固定されていない場合、AIは全キャラの心理・位置・関係性を同時に計算しながら出力します。コンテキストの消費が大きく、出力の後半ほど描写が粗くなり、まとめに逃げやすくなる。

視点キャラを固定すると、そのキャラの五感に入る情報だけを書けばいい。甲斐の視点なら、柊の表情は「見えている」が心情は書かない。柊が何を思っているかは、甲斐に見える動作——指先、声のトーン、沈黙の長さ——だけで暗示する。情報量が絞られるから、1シーンの密度が落ちないまま長く書けます。

フィックスショットが長回しに強いのと同じ構造です。カメラが動くたびに画角・照明・構図を再計算する必要がある。固定すれば、フレーム内の変化だけに集中できる。Claudeの視点固定もこれと同じで、「何を書くか」の判断コストが下がるから、出力が安定します。

Claudeで小説を書くプロンプトの作り方で解説した「禁止事項で表現を引き出す」テクニックと組み合わせると、視点固定+表現制約の相乗効果で出力密度がさらに安定します。

まとめ

Claudeの長文が途切れるのは「きれいにまとめたい」性質が原因です。ChatGPTの物理的な途切れとは対策が違います。

  • 視点アンカー(視点・開始動作・終了動作の3行)で「まとめ逃げ」を封じる
  • 出力区切りカードでシーン間の文脈を引き継ぎ、口調や感情のリセットを防ぐ
  • 視点を固定してAIの処理コストを下げ、1シーンの密度を最後まで保つ

視点アンカーと出力区切りカードの全パターン(BL・夢小説・汎用テンプレート対応)と3ジャンル分の記入例付きフルキットはBL Prompt Kit(BOOTH)で公開しています。

CharaNote開発日記

「AIに口調を守らせたい」——この記事で紹介したテンプレートを、もっと直感的に管理できるツールを作っています。

CharaNoteは、キャラ設定シートをAIが読める形式で保存し、どのAIツールにもワンクリックで渡せるキャラ管理アプリです。現在クローズドβに向けて開発中。

進捗や先行アクセスの案内はCharaNote公式で。