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2026-04-02Claude Projects 小説 使い方

Claude Projectsで小説を書く——設定を「住まわせる」だけで推しの声が安定する

Claude Projectsで小説を書く——設定を「住まわせる」だけで推しの声が安定する

「また口調が戻ってる……」

3話目を書こうとして、Claudeに設定を貼り直した。キャラシート、演出ルール、前回までのあらすじ。毎回同じことをコピペして、それでも出力の手触りが微妙にズレる。1話目で掴んだあの空気感が、もう出てこない。

Claude Projectsを使うと、この「毎回リセット」がなくなる。キャラ設定や演出ルールをプロジェクトに一度入れれば、どのチャットを開いてもClaudeはその設定を参照する。毎回貼り直す必要がない——だけでなく、出力の質が変わる。

この記事では、Projectsで小説を書くワークフローを3ステップで組み立てる。

ステップ1: 「変わらないもの」をCustom Instructionsに入れる

Claude Projectsを開いたら、最初にやるのはCustom Instructions(カスタム指示)の設定。ここに「作品を通じて変わらないもの」を入れる。

入れるべきものは3つ: キャラ設定世界観ルール演出ルール

実例を見せる。BL小説「窯の温度」のプロジェクトを作るとして、Custom Instructionsに入れる内容がこれ。

■ 作品情報
タイトル: 窯の温度
ジャンル: BL(スローバーン)
視点: 三人称(日下部寄り)

■ キャラ設定: 日下部蒼(28歳・陶芸家)
【口調ルール】
- 一人称: 俺
- 語尾: 〜だけど、〜かな(柔らかいが芯がある)
- 絶対に使わない言葉: 「寂しい」「一緒にいたい」「待ってた」
- セリフ例:
  1. 「……見る? まだ熱いけど」
  2. 「釉薬、変えたんだ。前のやつ、あんたが微妙な顔してたから」
  3. 「別に。ただの器だよ」
【行間の設計】
- 表: 淡々として見える。手元に集中している
- 裏: 三條が来る日だけ、釉薬の色を変えて焼いている
- 癖: 照れると轆轤の縁を親指でなぞる

■ キャラ設定: 三條律(31歳・美術雑誌の編集者)
【口調ルール】
- 一人称: 僕
- 語尾: 〜ですね、〜でしょう(丁寧だが距離を詰める言い方をする)
- 絶対に使わない言葉: 「好きです」「特別」「気になってます」
- セリフ例:
  1. 「この釉薬、前回と違いますよね。意図を聞いてもいいですか」
  2. 「……取材じゃなくても、来ていいですか」
  3. 「日下部さんの器は、持つと黙りたくなる」
【行間の設計】
- 表: 取材者として冷静。質問が鋭い
- 裏: 3回目の取材の企画書は、自分で上に通した
- 癖: 核心に触れるとペンを置く

■ 演出ルール
- 感情は説明しない。動作・沈黙・視線で表現する
- 心情説明(「嬉しかった」「胸が高鳴った」)は禁止
- 感情が高ぶるほど言葉を少なく、動作を小さくする

ポイントは**「絶対に使わない言葉」と「行間の設計」をCustom Instructionsに入れること**。チャットごとに渡すシーン指示ではなく、プロジェクトの土台に置く。

こうすると、どのチャットで何話目を書いても、日下部は「寂しい」と言わないし、三條は核心でペンを置く。設定がプロジェクトに「住んでいる」状態になる。

キャラ設定の詳しい作り方はChatGPTでBL小説を書くと「キャラ崩壊」する問題、プロンプトの構造で解決できるで解説している。Claude Projectsでもキャラ設定の構造は同じだ。

ステップ2: チャットごとに「変わるもの」だけ渡す

Custom Instructionsにキャラと演出ルールを入れたら、個別のチャットにはシーン指示だけを渡す。

たとえば第3話。日下部の工房に三條が3回目の取材に来るシーン。チャットに入力するのはこれだけ。

第3話を書いてください。

■ シーン
【場所】山あいの窯元。日下部の工房。午後、窯出し直後
【状態】3回目の取材。2人とも「取材」を口実にしていることに薄々気づいている
【ゴール】日下部が焼き上がった器を三條に渡す。ただし「試作の処分」という建前
【天気】曇り。工房の中は窯の余熱で暖かい

- 字数: 800〜1200字

キャラ設定も演出ルールも書かない。Projectsが自動で参照するから、日下部は轆轤の縁をなぞるし、三條はペンを置く。

Projectsなし(通常チャットに設定を毎回コピペ)とProjectsありで、同じシーン指示を渡した出力を比較する。

Projectsなし 三條は日下部の工房を訪れた。3回目の取材だった。日下部は窯から出したばかりの器を見せてくれた。「これ、よかったらどうぞ」と日下部は言った。三條は受け取り、「ありがとうございます」と答えた。器は温かかった。

Projectsあり 三條がノートを開く前に、日下部が棚から器を下ろした。まだ窯の熱が残っている。 「……持つ? 熱いけど」 三條はペンを置いた。両手で受け取る。親指が高台に触れたとき、釉薬の色が前回と違うことに気づいた。青みが深い。 「試作なんだ。うまくいかなかったやつ。処分するから、持って帰っていいよ」 日下部は轆轤の縁を親指でなぞっていた。視線は三條の手元——器を持つ指に、一瞬だけ。

▶ 変えたのは「設定の置き場所」だけ。Projectsに設定を固定したことで、Claudeが口調・禁止語・仕草の癖を毎回正確に参照できるようになる。

次に、このプロジェクト構成を自分の作品に書き換えるための空テンプレート。

■ 作品情報
タイトル: {作品タイトル}
ジャンル: {ジャンル}
視点: {視点(一人称/三人称。三人称なら誰寄りか)}

■ キャラ設定: {キャラ名A}({年齢}・{職業/立場})
【口調ルール】
- 一人称: {一人称}
- 語尾: {語尾の特徴}
- 絶対に使わない言葉: {3つ}
- セリフ例: {3つ}
【行間の設計】
- 表: {周囲に見せている姿}
- 裏: {本当は抱えていること}
- 癖: {感情が動いたときの仕草}

■ キャラ設定: {キャラ名B}({年齢}・{職業/立場})
【口調ルール】(同上の構造)

■ 演出ルール
- 感情は説明しない。動作・沈黙・視線で表現する
- 心情説明は禁止
- {作品固有の追加ルール}

{絶対に使わない言葉} {行間の設計} {癖}——この3項目を埋めれば、Projectsの土台ができる。残り2ジャンル(ファンタジー・現代夢小説)の記入例と、連作用の状態管理テンプレートはBL Prompt Kit(BOOTH)のフルキットに収録している。

ステップ3: 章ごとにチャットを分け、連作を回す

長編や連作を書くとき、Projectsの真価が出る。章(話)ごとにチャットを分けるのがコツ。

1つのチャットで何話も書き続けると、Claudeの応答が前の話の空気に引っ張られる。第1話がしんみりした別れのシーンだと、第2話の軽い会話まで重くなる。

チャットを分ければ、各話のトーンを独立させつつ、キャラ設定と演出ルールはProjectsから一貫して参照される。

ワークフローはこう回す:

  1. Custom Instructionsに固定情報を入れる(ステップ1でやった内容)
  2. チャット1で第1話を書く。シーン指示だけ渡す
  3. 第1話完了後、Custom Instructionsに状態メモを追記する: 「第1話で日下部が三條に器を渡した。三條はそれを編集部のデスクに置いている」
  4. チャット2で第2話を書く。前話の状態メモがあるので、Claudeは「器がデスクにある」前提で書く

この「状態メモ」の更新が、チャットを分けても物語が繋がる仕組み。Claudeに毎回「前回のあらすじ」を渡す必要がなくなる。

長編で途切れる問題の対策はChatGPTで小説が途中で途切れる3つの原因と、プロンプト設計で防ぐ方法でも詳しく解説している。ProjectsとシーンA分割を組み合わせると、途切れはほぼ起きなくなる。

なぜProjectsで出力の質が変わるのか

「設定を毎回貼っても同じでは?」と思うかもしれない。でも実際に比べると、Projectsに設定を固定した方が出力の「手触り」が明らかに違う。

これは文脈の連続性の問題。

人間の作家が、何ヶ月もキャラクターと過ごして書いた文章は、設定表だけ渡されて書いた文章とは質感が違う。長く付き合ったキャラは、設定表にない行動——たとえば「雨の日だけ少し早く工房を開ける」——を作家が自然に書く。設定の奥に「このキャラならこうする」という直感が育っているから。

Claudeも似たことが起きる。Custom Instructionsに設定が常駐していると、Claudeはチャットの冒頭から「このキャラを知っている状態」で書き始める。毎回コピペで渡す場合、Claudeはまず設定を読み込んで解釈してから書き始める——その「助走」の分だけ、出力の最初の数行がぎこちなくなる。

Projectsは設定を「一時的な情報」ではなく「前提知識」として扱わせる。だからClaudeの出力に、設定表にはない仕草や間が自然に現れる。日下部が轆轤の縁をなぞる癖は設定にある。でもProjectsに住まわせると、「釉薬の色を変えた理由を聞かれて、なぞる速度が少しだけ落ちる」まで出てくる。

まとめ

  • Claude Projectsは「変わらないもの」(キャラ設定・演出ルール)をCustom Instructionsに、「変わるもの」(シーン指示)をチャットに分けるだけで使える
  • 章ごとにチャットを分け、状態メモをCustom Instructionsに追記するのが連作のコツ
  • 上の空テンプレートに自分のキャラを埋めれば、今すぐProjectsで1話書ける。全ジャンルの記入例と連作用ワークフローテンプレートはBL Prompt Kit(BOOTH)のフルキットで