「白石翔はペットショップの店員で、動物が好きな明るい青年だった——って、これ履歴書じゃん」
Copilotの出力をスクロールする。選択して、削除する。プロンプトの末尾に「もっと小説っぽく」と書き足して、再生成ボタンを押す。返ってきた文章はさっきと語尾が違うだけで、構造は同じ「説明文」だった。
原因はCopilotの性能ではなく、プロンプトに「何を書かないか」の指示がないことにある。
ステップ1: Copilotの小説向きな特性を押さえる
Copilotで小説を書くとき、まず知っておくべき特性が3つある。
GPT-4ベースの文章力。Copilot(Microsoft Copilot)はGPT-4をベースにしており、日本語の語彙力と文脈理解はChatGPTとほぼ同等。つまり「Copilotだから書けない」ということはない。プロンプトの構造次第で出力は大きく変わる。
Creativeモード。Copilotには会話スタイルの選択肢があり、「Creative」を選ぶと比喩や描写の自由度が上がる。小説を書くなら必ずCreativeモードで始める。
ノートブック機能。通常のチャットは入力に文字数制限があるが、ノートブック機能を使えば長文プロンプトを一括で送れる。キャラ設定・演出ルール・シーン指示をまとめて渡す場合、ノートブック一択になる。この「一括入力」がCopilotで小説プロンプトを組み立てるときの最大の武器になる。
ChatGPTやClaudeとの使い分けについては、AI小説のプロンプトテンプレートで構造の比較を詳しく解説している。
ステップ2: Copilot用の小説プロンプトを組み立てる
Copilotに小説を書かせるプロンプトは、3つのブロックで構成する。キャラ設定、演出ルール、シーン指示。この順番が重要で、AIはプロンプトの前半に書かれた情報を優先的に守る。
まずは完成形のプロンプト例を見てほしい。
【キャラ設定】
・白石翔(26歳・ペットショップ店員)
一人称「俺」。語尾に「っすよ」が混じる。犬に話しかけるとき
だけ声のトーンが上がる。感情が顔に出やすく、嘘がつけない。
・河野恵(30歳・ペットフードメーカー営業)
一人称「俺」。敬語ベースだが、動揺すると語尾が途切れる。
犬に好かれる体質。それを「営業スキル」だと主張するが、
白石の店の犬にだけ異常になつかれていることには触れない。
【演出ルール】
- 感情は説明しない。表情・沈黙・動作・小道具だけで伝える
- 「嬉しかった」「切なかった」は禁止。代わりに手元の動きを書く
- 視点は白石固定。河野の内心は描写しない
【シーン指示】
場所: ペットショップの店内(閉店後の餌やりタイム)
状況: 月2回の定期納品日。河野が新商品のサンプルを持ってきた。
店の柴犬が河野の膝に乗っている。
書いてほしいこと: 河野が帰ろうとするが犬が離れない場面。
白石が「犬のせい」にして引き止める瞬間まで。800字程度。
ここから、自分の作品に使える空テンプレートに置き換える。
【キャラ設定】
・{キャラA名}({年齢}歳・{職業})
一人称「{一人称}」。{口調の特徴を1文}。
{感情表現のクセを1文}。
・{キャラB名}({年齢}歳・{職業})
一人称「{一人称}」。{口調の特徴を1文}。
{キャラAとの関係で出る特有の反応を1文}。
【演出ルール】
- 感情は説明しない。表情・沈黙・動作・小道具だけで伝える
- 「{禁止したい感情説明の例}」は禁止
- 視点は{視点キャラ名}固定。{もう一方}の内心は描写しない
【シーン指示】
場所: {場所}({時間帯や状況の補足})
状況: {二人がそこにいる理由を2文}
書いてほしいこと: {シーンのゴールを1文}。{字数}字程度。
このテンプレートには設計上の意図がある。キャラ設定に「口調のクセ」と「感情表現のクセ」を分けて書かせることで、AIが「その人だけの話し方」と「その人だけの感情の出方」を区別できる。「明るい性格」のような曖昧な指示では、AIは毎回違う「明るさ」を出力してしまう。
このテンプレートのジャンル別パターン(BL・夢小説・一般文芸)のフルセットはBL Prompt Kit(BOOTH)に収録している。キャラ設定をAIに渡すところまでワンストップで管理したい場合はキャラノート(β)も合わせて使える。
ステップ3: 演出ルールでCopilotの「AIっぽさ」を消す
プロンプトの3ブロックの中で、出力の質を最も左右するのが演出ルール。同じキャラ設定・同じシーン指示でも、演出ルールの有無で出力はここまで変わる。
before(演出ルールなし) 河野が立ち上がると、白石は寂しそうな顔をした。「もう帰るんすか」と言いながら、本当はもっと一緒にいたいと思っていた。河野は少し迷ったが、「また来月」と微笑んだ。白石は嬉しさを隠しきれなかった。
after(演出ルールあり) 河野がカバンを持ち上げた瞬間、膝の上の柴犬がきゅんと鳴いた。白石はフードの袋を閉じる手を止めて、犬のほうを見た。「……なんか今日、やけに甘えてるっすね、こいつ」河野は柴犬の背中を一度だけ撫でて、手を離さなかった。
変えたのは「感情を説明するな」という1行だけ。
なぜこれだけで出力が変わるのか。理由は情報設計にある。
beforeでは「寂しそうな顔」「もっと一緒にいたいと思っていた」「嬉しさを隠しきれなかった」と、キャラの内面がすべて文中に書かれている。読者は情報を受け取るだけで、自分の頭を使わない。
afterでは、白石が「犬のせい」にして河野を引き止めようとしていること、河野が手を離さないこと——どちらも「感情」とは一言も書いていない。だが読者は二人の気持ちを自分で補完する。この「自分で気づいた」という体験が、物語への没入を深くする。
情報設計の原則は単純で、書き手が100%を説明するほど、読者の参加度は0%に近づく。プロンプトの演出ルールは、AIに「70%だけ書け。残り30%は読者に渡せ」と指示する装置として機能する。
Claudeで小説を書くプロンプトの作り方でもこの「書かない技術」について別の角度から解説しているので、ツール横断で演出を比較したい方は参照してほしい。
応用: Copilotのノートブックで長編プロンプトを管理する
通常のCopilotチャットでは、長いプロンプトを送ると途中で切れることがある。ノートブック機能を使えば、キャラ設定シート・演出ルール・シーン指示を1つのテキストにまとめて一括送信できる。
使い方は簡単で、Copilotの画面右上「ノートブック」タブを開き、テキストエリアにプロンプト全文を貼り付けるだけ。チャット形式と違って会話の流れにプロンプトが埋もれないため、再生成のたびにキャラ設定を貼り直す手間がなくなる。
もうひとつの応用はEdge連携。Microsoft EdgeのサイドバーからCopilotを開けば、ブラウザで参考資料を見ながらプロンプトを調整できる。たとえば既存の自作小説をタブで開いておき、「この文体に合わせて」とCopilotに指示する使い方が可能になる。
まとめ
Copilotで小説プロンプトを組み立てるコツは3つ。キャラ設定で「口調」と「感情のクセ」を分離する。演出ルールで「感情を説明するな」と1行入れる。ノートブック機能で設定を一括管理する。
テンプレートのジャンル別フルキット(BL・夢小説・一般文芸対応)はBL Prompt Kit(BOOTH)で公開している。キャラ設定の一元管理にはキャラノート(β)を試してほしい。
CharaNote開発日記
「AIに口調を守らせたい」——この記事で紹介したテンプレートを、もっと直感的に管理できるツールを作っています。
CharaNoteは、キャラ設定シートをAIが読める形式で保存し、どのAIツールにもワンクリックで渡せるキャラ管理アプリです。現在クローズドβに向けて開発中。
進捗や先行アクセスの案内はCharaNote公式で。