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2026-04-03Gemini 小説 書き方 プロンプト

Gemini小説の書き方プロンプト——100万トークンの記憶力を武器にする3ステップ

Gemini小説の書き方プロンプト——100万トークンの記憶力を武器にする3ステップ

「ChatGPTで使ってたプロンプト、Geminiにもそのまま貼ったんだけど……なんか、薄い」

画面に表示された出力をスクロールする。3,000字のシーン。文法は正しい。キャラも一応しゃべっている。ただ、前の章で起きたことが反映されていない。設定したはずの口癖が一度も出てこない。タブを閉じて、もう一度同じプロンプトを貼る。結果は同じだった。

Geminiで小説を書くプロンプトは、ChatGPTやClaudeとは「渡し方」が違う。100万トークンのコンテキストウィンドウ——この記憶力を活かすには、情報の「量」と「構造」を変える必要がある。

Geminiで小説を書くとき「短いプロンプト」では損する理由

ChatGPTの小説プロンプトは「短く、明確に」が基本。キャラ設定を100字以内に圧縮し、シーン指示を箇条書きにまとめる。コンテキストウィンドウの制約があるから、情報を削って精度を上げる。

Geminiは逆。Gemini 2.0以降は100万トークン以上のコンテキストを一度に処理できる。キャラ設定シートの全項目、世界観の設定資料、前の章の本文——圧縮しなくていい。全部をそのまま渡せる。

ただし「全部渡す」と「雑に全部貼る」は別物。Geminiの長文脈は情報が多いほど精度が上がる設計だが、構造なく詰め込むと出力がぼやける。

以下の3ステップで、Geminiの長文脈を小説の質に変換する方法を見せる。

ステップ1: キャラ設定を「全項目」渡す

ChatGPT用に圧縮したキャラ設定をGeminiにも使っていないだろうか。Geminiでは、圧縮せず全項目を渡したほうが出力の解像度が上がる。

靴職人・堂本涼一(41歳)とフリー校正者・峰岸陸(23歳)の例で完成形を見せる。

あなたは小説の執筆アシスタントです。以下のキャラ設定に基づいて、指示されたシーンを執筆してください。

【キャラ設定: 堂本 涼一(41歳)】
- 職業: ビスポーク靴職人(独立12年目、東京・蔵前に工房)
- 一人称: 私
- 口調: 丁寧語を崩さない。「〜ですね」「〜でしょうか」が多い
- 口癖: 「それはそうと」(話題を変えるとき)
- 絶対に使わない言葉: 「急ぎましょう」(靴作りに急ぎはないという信条)
- 性質: 丁寧語の壁の向こうに、静かだが強い執着がある
- 矛盾: 完璧な靴を作ることに命を削るが、自分の靴は5年前のボロボロの一足
- 外見: 白髪交じりの短髪、革の匂いが染みついた手

【キャラ設定: 峰岸 陸(23歳)】
- 職業: フリー校正者(出版社を1年で辞めて独立)
- 一人称: 俺
- 口調: 敬語を使わない。「〜だろ」「〜じゃん」。仕事の話になると急に正確になる
- 口癖: 「それ、誤用」(日常会話でも他人の言葉遣いを指摘する)
- 絶対に使わない言葉: 「まあいいか」(曖昧なまま放置できない性格)
- 性質: 負けず嫌い。相手が年上でも遠慮なく踏み込む
- 矛盾: 他人の文章の「誤り」は一瞬で見抜くのに、自分の感情の名前がわからない
- 外見: 細身、常にイヤホンの片耳だけ付けている

【2人の関係性】
- SNSの相互フォロワー(同じ靴ブランドのファン)。DMで3ヶ月やりとりした後、中古レコード店で初めて対面する
- 堂本は峰岸の「遠慮のなさ」に惹かれている。峰岸は堂本の「丁寧語の裏にあるもの」に気づき始めている
- まだ互いの感情に名前はついていない

【世界観・背景】
- 時期: 11月下旬、東京
- 峰岸は堂本にオーダーメイドの靴を注文しようとしている(ただし堂本は個人客の新規受付を3年前から止めている)

【演出ルール】
- 感情は説明しない。表情・沈黙・動作・セリフだけで表現する
- 「嬉しかった」「切なかった」等の心情説明は禁止
- 感情が高ぶるほど言葉を少なく、動作を小さくする

このキャラ設定テンプレートは「BL Prompt Kit」のキャラシート構造を基にしています

ポイントは3つ。

「矛盾」を書く。 「丁寧な靴職人」だけでは、Geminiは無難な紳士しか書かない。「完璧な靴を作るのに自分の靴はボロボロ」という矛盾を入れると、AIはシーンの中でこの矛盾を「見せよう」とする。行動に奥行きが出る。

「絶対に使わない言葉」を入れる。 これが伏線になる。物語のクライマックスで堂本が「急ぎましょう」と言ったとき、その一言が持つ重みが変わる。AI小説のキャラクターの作り方で解説した「禁忌設定」と同じ原理。

「関係性」を独立項目にする。 キャラ個別の設定だけでは、2人の力学が生まれない。「DMで3ヶ月」「まだ感情に名前はない」——この距離感を渡すことで、Geminiは2人の会話に適切な緊張感を乗せる。

自分のキャラで使うなら、以下の空テンプレートを埋めるところから。

あなたは小説の執筆アシスタントです。以下のキャラ設定に基づいて、指示されたシーンを執筆してください。

【キャラ設定: {名前A}({年齢}歳)】
- 職業: {職業と具体的な肩書き}
- 一人称: {俺/僕/私/わたし}
- 口調: {語尾の特徴、敬語の有無}
- 口癖: 「{セリフ}」({どんなときに出るか})
- 絶対に使わない言葉: 「{セリフ}」({なぜ使わないか})
- 性質: {1行で}
- 矛盾: {表面の性質と裏の行動のギャップ}

【キャラ設定: {名前B}({年齢}歳)】
- 職業: {職業と具体的な肩書き}
- 一人称: {俺/僕/私/わたし}
- 口調: {語尾の特徴、敬語の有無}
- 口癖: 「{セリフ}」({どんなときに出るか})
- 絶対に使わない言葉: 「{セリフ}」({なぜ使わないか})
- 性質: {1行で}
- 矛盾: {表面の性質と裏の行動のギャップ}

【2人の関係性】
- {出会いの経緯}。{現在の距離感}
- {Aから見たBの印象}。{Bから見たAの印象}
- {関係性の現在地: まだ〜の段階}

【演出ルール】
- 感情は説明しない。表情・沈黙・動作・セリフだけで表現する
- 「嬉しかった」「切なかった」等の心情説明は禁止
- 感情が高ぶるほど言葉を少なく、動作を小さくする

このテンプレートのBL版・夢小説版の記入例と、ジャンル別の「矛盾パターン集」はBL Prompt Kit(BOOTH)のフルキットに収録している。

ステップ2: 前のシーンを「全文」添えて次のシーンを生成する

Geminiの長文脈が本領を発揮するのはここ。ChatGPTでは前の場面の「あらすじ」を渡す。コンテキストの節約のためだ。Geminiには前のシーンの本文をそのまま貼れる

以下の【前のシーン】の続きとして、【次のシーン】を執筆してください。

【前のシーン】
{前のシーンの本文をそのまま貼る(1,000〜3,000字でもOK)}

【次のシーン指示】
■ 場所: 中古レコード店の試聴コーナー。ヘッドホンが4台並んでいる
■ このシーンのゴール: 堂本が峰岸の「声」を初めて聞き、DMの文面と声のギャップに動揺する
■ 感情の方向:
  - 堂本: 余裕(会えて嬉しい)→ 動揺(想像していた声と違う)
  - 峰岸: 警戒(相手を値踏みしている)→ 不意を突かれる(堂本が自分の靴を見た)
■ キーワード: ヘッドホンのコード、11月の手の冷たさ、レコードの針を落とす音
■ 禁止: 堂本に「お会いできて嬉しい」と言わせない。峰岸に照れさせない

前のシーンの本文を丸ごと渡すメリットは「文脈の連続性」。あらすじでは「堂本がコーヒーを淹れた」としか伝わらないが、本文を渡せば「どんなカップで、何秒間黙っていたか」まで引き継がれる。Geminiはこの細部を次のシーンに反映する。

あらすじ要約を渡した場合(before) 峰岸が試聴コーナーに立っている。堂本が隣に来る。「峰岸さんですか」と声をかける。峰岸は振り返る。「堂本さん? 思ったより背が高いですね」。2人はぎこちなく挨拶を交わし、レコードの話を始める。堂本が峰岸の靴に目をやる。峰岸は気づかない。

前のシーンの本文を全文渡した場合(after) 峰岸はヘッドホンの右耳だけ外した。左耳からはまだサックスの残響が漏れている。試聴コーナーの3番目のスツールに座ったまま、入口を見ていた。

堂本は静かに現れた。コートの襟を正す仕草が、DMの文面そのまま——丁寧で、隙がない。峰岸は立ち上がらなかった。

「……峰岸さん、でしょうか」

声が低い。DMの柔らかい語尾から想像していた声と、2オクターブ違った。堂本の視線が峰岸の足元に落ちる。量産品のスニーカー。つま先が擦り切れている。堂本の目が、一瞬だけ職人のそれに変わった。峰岸はそれに気づいた。

「靴、見てるでしょ」

堂本は顔を上げた。「……それはそうと、何を聴いていたんですか」

▶ 変えたのは「前のシーンのあらすじ」を「前のシーンの本文」に差し替えただけ。

before版では堂本と峰岸が「初対面のテンプレート」通りに動いている。after版では、キャラ設定の細部——峰岸のイヤホン習慣、堂本の丁寧語、靴への執着——が自然に反映されている。

なぜこの差が生まれるのか。情報設計の観点から言えば、あらすじ要約は「出来事」だけを残して「ディテール」を捨てる。小説の場面をつなぐのは出来事ではなくディテールのほう。前の場面で堂本がコートのボタンを上から2番目だけ外していた——この情報があるとGeminiは次の場面でも同じ癖を再現する。あらすじにはこの情報がない。結果、場面ごとにキャラが「初期化」される。

Geminiの100万トークンは、この圧縮損失をゼロにできる。場面間の空気が途切れなくなる。

ChatGPTとClaudeの小説比較で解説したモデルごとの特性と合わせると、場面の性質に応じてGemini・ChatGPT・Claudeを使い分ける戦略が見えてくる。

ステップ3: 文体指示でGeminiの出力を絞る

Geminiの出力は、デフォルトだとやや説明的になる。特に地の文で感情を直接書いてしまうことが多い。「峰岸は少し驚いたようだった」「堂本は嬉しさを隠しきれなかった」——こういう一文が混ざる。

これを制御するには、シーン指示に「文体ルール」を追加する。

【文体ルール】
- 1段落は3文以内。短い段落で呼吸を作る
- 沈黙は「……」ではなく、動作の描写で表現する
  (例: 堂本は答えなかった。代わりにコートのボタンを1つ外した)
- 比喩は1シーンに1回まで。使うなら五感に基づくもの
- 視点は堂本固定。峰岸の内面には触れない

この4行を追加するだけで、Geminiの出力から心情説明が消える。代わりに「峰岸のイヤホンのコードが揺れた」のような動作描写に置き換わる。

Geminiは指示を忠実に守る傾向が強い反面、指示がないと「安全側」に倒れて説明過多になる。文体ルールは「書くな」を具体的に渡すことで、AIが自分で判断する余地を減らす仕組み。AI小説のAI臭さを消す方法で解説した「演出ルール」をGemini用に調整したのがこの文体ルール。

ChatGPTでは演出ルールを短く圧縮する必要があったが、Geminiにはこうした追加指示を何層でも重ねられる。キャラ設定+シーン指示+文体ルール+前のシーン本文——すべてを同時に渡してもGeminiは処理できる。この「情報の重ね着」が、Geminiで小説を書く最大の強み。

まとめ

  • Geminiの100万トークンは、キャラ設定の「圧縮」をやめることで活きる。矛盾・禁忌・関係性を全項目渡す
  • 前のシーンは「あらすじ」ではなく「本文」を添える。ディテールの圧縮損失を防ぎ、場面間の空気をつなぐ
  • 文体ルールで「書くな」を具体的に指定する。Geminiは指示がないと説明過多になる

キャラ設定テンプレート・シーン指示テンプレート・文体ルールの全パターンはBL Prompt Kit(BOOTH)に収録している。Gemini・ChatGPT・Claude対応、記入例付き。

CharaNote開発日記

「AIに口調を守らせたい」——この記事で紹介したテンプレートを、もっと直感的に管理できるツールを作っています。

CharaNoteは、キャラ設定シートをAIが読める形式で保存し、どのAIツールにもワンクリックで渡せるキャラ管理アプリです。現在クローズドβに向けて開発中。

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